MC昇圧トランスとMCカートリッジインピーダンスの完全マッチング
以下はAnalog誌ほかオーディオ雑誌でも見たことのない実験ですし、語られれてこなかったことです。
MCカートリッジのインピーダンスに、MC昇圧トランスのインピーダンスをピタリと合わせる電気的意義はすでに書きました。
自分のSPU初期型をARAI lab.に送って、インピーダンスを実測してもらったところ、⒉Ωであることがわかりました。
アコリバ石黒社長からお借りした⒉Ωと4Ωの2種類になります。
うちのSPUにピタリと合わせたトランスとそうでない4Ωのトランスでどのような違いになるのかの実験になります。
こちらがARAI LabのMT-1の2Ωモデル。
2ΩのSPUの他に、アコリバの試作品である4Ωのカートリッジも使って同様に4Ωにピタリと合わせた場合と2Ωでズレた場合の実験も行いました。
結果的に昇圧トランスのインピーダンスはカートリッジのインピーダンスより低くても高くてもダメで、ピタリと合わせた状態に比べると著しくクオリティが劣化してしまうことがわかりました。
4Ωの現代カートリッジを2Ωのトランスで受けた場合にはエネルギー感や音圧が一気に減衰してしまい、低域も高域も延びずナローレンジになってしまいます。
音場も立体感もなく平面的で抑揚のないこしんまりしたものに成り果てます。
4Ωでピタリとマッチングさせた場合、現代カートリッジならではの超ワイドレンジで三次元的な立体音響っエネルギー感や躍動感てもSPUを凌駕するかのような再現性なのに、MCトランスの受けインピーダンスのズレでこんなに違って聴こえてしまうことに驚きを隠せません。
逆に2ΩのSPUを高いインピーダンス4Ωのトランスで受けると、同じく低域も高域も延びなくなりナローレンジになってしまいます。
エネルギー感や音圧の減衰は低いインピーダンスで受けた時ほどではないものの、減衰があるのは間違いなく、歪みや混濁が増えて音の抜けや見通しが非常に悪くなってしまいます。
正直申し上げて、カートリッジとトランスのインピーダンスを合わせるのと合わせないのとでは同じカートリッジだとは思えないくらい別物の音になってしまいます。
インピーダンスが合わない場合は安物のMM型以下といっても過言ではないくらいクオリティが劣化してしまいます。
これまでMCトランスはハイタイプとロータイプでおおまかに分かれていて、厳密な意味でMCカートリッジとのインピーダンスの完全マッチングは意識されてきませんでしたが、カートリッジを生かすも殺すもインピーダンスマッチング次第だということを痛感しました。
例えばOrtofonはかつて、新型SPUが出れば、それ専用の昇圧トランスが出ていました。
これはインピーダンスマッチングの重要性をOrtofonがわかっていたからなのでしょう。
OrtofonのSPUにはトランス内蔵タイプの型番末尾にTがつくモデルがありました。
この内蔵トランスは非常に小型で広帯域再生は望めないはずなのに、非常にバランスが良く意外と広帯域だったのはカートリッジと完全にマッチングするインピーダンスのトランスだったからですね。
DENON103についても同様ですね。
103はMCカートリッジとしては40Ωというハイインピーダンスになります。
40Ωという昇圧トランスなど市場にはありませんから、DENON純正の40Ωのトランスを使うしかありません。
私は103は開発者の白根さんから直接、それも欧米放送局向け輸出用の一個一個、厳密に測定して、設計性能を満たしているのか確認されたグラフが付いている103proという厳選モデルを買っています。
MCトランスはこれに合わせて白根さんが開発販売されたハイフォニックス社の専用MCトランスも同時に買っています。
仮に40Ωの103を10Ω以下のローインピーダンスのトランスで受けたらさぞかし酷い音になるでしょうね。
MC昇圧トランスはインピーダンスマッチングが鉄則です。
インピーダンスマッチングが出来ないならばヘッドアンプで受けた方が遥かに良い結果が得られると断言します。