オーディオにおけるアースの正しい概念は評論家やオーディオ雑誌はもちろん、メーカーや販売店、さらにはアース工事業者まで含めて解っているのは皆無に等しいといっても過言ではありません。
接地アース工事を行う出水電気にはアースループの概念がありませんでしたし、オーディオアクセサリー誌の仮想アース特集で偉そうにアースの概念を長々と語っていたKOJOのじょんがる隊長にしても、氏が開発した仮想アースCrystal Eは完全なアンテナ構造で音質改悪装置にしかなり得ないことが今回の検証実験で判ってしまいました。
オーディオにおけるアースの総括として下記に仮想アースとリアルアースの注意点をまとめました。
仮想アースの購入やリアルアース工事で失敗しないためにもぜひ参照されてください。
※仮想アースは1機器につき原則1個 アース線は絶対に複数繋がない!
CADなど複数のアース端子がある仮想アースからアース線を複数オーディオ機器へ接続するとアースループを引き起こし音質劣化になるばかりか最悪の場合、発振や故障に繋がる。
アース端子が複数ある仮想アースにはオヤイデがやっているエントレックなどもありアース線は複数繋がないことを厳重に守るべき。
※仮想アースがアンテナ化しているかの確認方
FMラジオのロッドアンテナにワニ口クリップで仮想アースからのケーブルを接続して、受信感度が上がるようなら、仮想アースノイズが仮想アースとしての機能を果たしていないばかりか、逆にノイズや電波、電磁波を受信してオーディオ機器に混入させている恐れあり。
※ドンシャリやハイ上がりの派手な音質変化に惑わされない。
CADやKOJOのようにアンテナ化してしまう仮想アースの音質はドンシャリ、シャリシャリしたハイ上がりの傾向が強い。声のサ行が目立ち子音が荒れる、パ行の破裂音が歪んで割れる、全体的に自然さがなくなり電気的な音質になってしまう。
このような音質変化は一聴派手で鮮度が上がった風に聴こえるので、音が良くなったと勘違いするマニアも多いはずだが、高域の強調はノイズ混入による歪みの増加なので注意すべき。
良質な仮想アースの真価はS/N、3D立体感の向上で見える音になることである。
※アンテナ化する構造の仮想アースは要注意
仮想アースによるアンテナ作用は網のような金属線の集合帯のような構造(例:CAD)、金属板を積層した構造のもの(例:KOJO)、アース端子が複数あるものではアンテナ化してしまう可能性が高いので要注意。このような構造の仮想アースにおいては上記ラジオ実験は必須だろう。
※仮想アースのアースケーブルはシールド付きのものが望ましい。
現在はアコリバのしかないようだが、アースケーブルはシールドされていて、ケーブルがアンテナにならない構造にする必要がある。
またアースケーブルは長ければ長いほどアンテナ化するので、長い場合はせめて切り詰めて最短の長さで使うべき。
※環境によっては当たり外れが出るリアルアース。
環境とは地盤地質から来る接地抵抗値、そしてリアルアース工事箇所周囲にアースから地中にノイズを流しているような施設(工場、マンションなど)があるかどうか?
リアルアースは基準値の接地抵抗値が得られなければアースとして機能しないし、接地抵抗値が低過ぎれば周辺の工場やマンションのアースからノイズを引き込んでしまい、逆に音質劣化を引き起こしてしまう。
(リアルアースでの地中からのノイズ逆流対策はグラウンドナイトというアースラインノイズカットグッズあり)
※リアルアースがアンテナ化しているかの確認方
リアルアースもFMラジオや短波ラジオのロッドアンテナを繋いでみて、ノイズが増えるようならアンテナ化しているので使用は控えるべき。
※リアルアースは一点アースが原則
仮に完璧なリアルアースを引いたとしても一点アースを守らなければアースループを引き起こして音質劣化は避けられない。
特に壁コンセントにリアルアースを引いて3P電源ケーブルを多数使用している場合は厳重注意が必要。
この場合は3P電源ケーブルはオーディオシステムのうち1本だけとし、他の電源ケーブルはアース線なしの2Pとすることで一点アースが実現する。
※一点アースでなくなる例外は光ケーブルやライントランスを使用した場合
光ケーブルやライントランスを使用した場合は、ラインケーブルのマイナス側が繋がらない。つまり機器間のアースが切り離されるので、この場合は一点アースではなく、例外として光ケーブルやライントランスで切り離された双方の機器にリアルアースを落としてやる必要がある。
※リアルアースはシャーシ電位が一番低い機器に落とす
リアルアースはオーディオシステムの中で一番シャーシ電位が低い機器に落とす。
これは電気が電位が高い方から低い方へと移動する性質を利用してスムーズな電位移動となるためである。
正しいシャーシ電位を計測するには必ず電源ケーブル以外の全てのケーブルを外して、電源スイッチを入れた状態で測ること。