PT(浸透探傷試験)の思い出
私が入社して現場で初めて非破壊検査の作業そのものをやったのがPTでした。それまでは塗装を剥がしたり、記録を取ったり、作業を見ているだけだったりする感じでしたからね。「PTって何?」という方はとりあえずこれを見てください。浸透探傷試験(PT) - 北日本非破壊検査株式会社 (kitanihonhihakai.co.jp)PTって他にも紫外線を当てると光る浸透液を用いる方法とか色んな方法があるのですが、プラントの現場で一番やるのは上で紹介した「溶剤除去性染色浸透探傷試験 速乾式現像法」です。というか、私の場合現場でのPTはこの方法しかやったことがなく、他の方法はPTの実技試験でしかやったことがありません。それくらい現場ではこの方法をめっちゃやります。PTのことを「カラーチェック」と言う人も居ましたね。PTって表面に開口したきずを見つける手法ですので、表面とかきずの中の汚れ等を取り除かなければならず、塗装とか錆とか油脂とかを綺麗に除去する作業から始まります。これが検査するものや環境によってはめっちゃ大変だったりします。クソ狭い場所ではヘッドライトとハンドミラーを駆使して作業をしたり、クソ寒い場所ではスプレーの出が悪くてツナギの中でスプレー缶を体温で温めたり、強風の中では現像剤を噴射しても検査対象物に辿り着くまでに風に流されるのでスプレー缶を近づけて噴射したらミスってめっちゃムラが出来たり、雨の日にはシートを被せてその中で検査範囲が作業中に濡れないようにしたり、機器の中といった閉鎖空間で且つ広範囲の検査では排風機を使ったりはするのですが洗浄液や現像剤に酔ったり防塵マスクが粉まみれになったり…。結果をデジカメで撮影しなければならない場合、暗い場所で綺麗に写すのって結構難しくて、現像剤が白色なのでフラッシュを炊くと真っ白になるしライトを当てるにしても当て方を考えないといけないし、指示模様(現像剤を掛けて赤く浮かび上がった模様)の長さを示す為にコンベックス(いわゆるメジャー)も一緒に写し込むとなると片手で撮影するのでブレたりしてなんか色々難しかったですね…。あと、場合によってはその時の様々な条件によって指示模様が出たり出なかったりすることがあります。そうすると前回のデータと比較をして経過観察的なことをしている場合、前回と同じか酷くなっているのであれば良いのですが、前回出ていた指示模様が今回出ないということになると困るんですよねー…。お客さんの立ち合いがある時とか本当にね…。そういえば火力発電所は現像剤を薄く掛けて、原子力発電所は現像剤を濃く掛けるという風潮がありました。初めて火力発電所に行った時に原子力発電所と同じように現像剤を掛けたら「なんでこんな濃く掛けるの!!!」って怒られて「(は!?)」って思いました。いや、マジで「知らねえよ」って感じでしたよ…。注意事項 火気厳禁 異物混入・落下に注意 適切な保護具の着用 換気は大事 気分が悪くなったら脱出プラントの現場の場合、周囲で溶接作業やグラインダーを用いた作業が行われていることがあります。もしスプレーを噴射している時や洗浄液の染み込んだウエスに火花が飛んで来たら引火しますので、近くで作業しないこととウエスは常にケースにしまう癖をつけるのが大事です。「危険物を扱っている」という意識をもちましょう。異物混入に関しては例えば開先部(溶接前の部分)の検査時は配管の中が丸見えなのでそこに物を落としてしまったら取り返しのつかないことになることがあります。配管を切断したり水を入れたりRTをしたり、とにかく配管内に落としてしまった物を回収出来るまで探し続けなければなりません。また、ヤスリとかワイヤーブラシといった小物を手を滑らせて高所から下に落下させてしまったり、倒れたスプレー缶が転がって落下したりしてもし下に居る人に当たったら大変です。機器を破損させる恐れもあります。マジで気を付けてください。洗浄液というのは有機溶剤で、現像剤は細かい粉です。いっぱい吸い込むとマズいので換気、適切なマスクの着用をしましょう。マジで酔います。万が一気分が悪くなったら遠慮せず周りに声を掛けて脱出しましょう。