第七章 四日目・島 その1 | 弐位のチラシの裏ブログ

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 今日の十角館の殺人はどうかな?


 ルルウが部屋から出ると、ホールでエラリイとヴァンが喋っている。アガサとポウもすでに起きていて、厨房のほうにいる。
 「おはよう、ルルウ。無事で何よりだ」
 冗談といったふうでもなくそう言うと、エラリイはルルウの斜め背後を差した。
 「え?」
 振り返ってみて、ルルウは思わず丸い眼鏡の縁に指を掛けた。


 『第二の被害者』


 カーの部屋のドアである。目の高さあたり、オルツィの時と同じ位置に、カーの名札を隠して例のプレートが貼り付けられているのだった。
 「何とも律儀な犯人じゃないか。ここまでやってくれると嬉しくなるね」
 ルルウは後辞さるようにしてその場を離れ、長い足を組んで椅子に座っているエラリイを見やった。
 「残りのプレートは、あのまま台所の引き出しに入れて置いたんでしたよね」
 エラリイは、持ちだしてきてあったプレートをテーブルの上でまとめて、ルルウの方へ滑らせた。数えてみるとプレートは6枚あった。
 「見ての通りさ。犯人は同じものを、たぶんもう一組用意しているんだ。
 それから、これはアガサには内緒だが-」
 エラリイは声を低くして、ルルウを手招きした。
 「下手に知らせて、取り乱されちゃ困ると思ってね。彼女が起きてくるよりも前の出来事だったから、ヴァンとポウの3人で相談して、隠しておくことに決めたんだ。
 発見したのはポウだ。昼すぎに起きて、顔を洗いにいったついでに、何となく気になって奥の浴室を覗いてみたらしい。
 すると、バスダブの中に血まみれの手首が落ちていたのさ」
 「何ですってぇ」
 ルルウは口に手を当てて、
 「そ、それは、オルツィの?」
 「カーの左手首から先が、切り取られてそこに置いてあったんだ。
 今朝、僕らが眠り込んだ頃を見計らって、犯人がやったんだろう。カーの部屋には鍵を掛けておかなかったからな。忍び込んで、死体の手首を切り落とすことは誰にでもできた。時間さえかければ、アガサにだって可能な作業だろう」
 「その手首は今、どこに」
 「カーのベッドに戻しておいたよ。そのまま放っておくわけにもいかないからね」
 ルルウはうずくこめかみを押さえた。
 「また見立てですか」
 まもなくアガサとポウが厨房から出てきて、食卓を整え始めた。スパゲッティ、チーズ入りのパンプディング、ポテトサラダにスープ。
 「ルルウ、ちゃんとポウが見張っててくれてましたからね、安心して召し上がれ。まさか、ポウとあたしが共犯だなんて言わないでしょ」
 アガサが皮肉たっぷりに言った。