そもそも警察犬訓練士たちが未だに頑なに信じている(信じているフリをしている)
支配性理論(優位性理論・パックリーダー論・アルファ論)などと言われている、
存在しない犬の本能に基づいて体罰を使った強制服従訓練を行うのは、
Monks of New Skete(モンクスオブニュースキート)と呼ばれる1966年にアメリカのニューヨーク州で発足したアメリカ正教会の修道僧たちの存在が大きいのです...
この修道士たちはお祈りとチャリティだけにしておけばいいのに、こともあろうにジャーマンシェパードのブリーダーとして収益を上げ始めました。
さらには1970年代に入るとドッグトレーニングの本まで出版したのです。
ニューヨーク州の中でもかなり郊外ののんびりとした地域で、
修道僧たちとシェパードたちが仲良く暮らしているいい雰囲気の本なのですが、
トレーニングの内容が今や学術的に否定されている「犬は先祖の狼の血を受け継いており群れのリーダーになろうとする本能があるので飼い主が自分の方が上位の存在であることを体罰を使っても叩き込まなければいけない」という基本理念の元に行う訓練なのです。
体罰に関しても細かなテクニックまで記載されています。
●アンダー・ザ・チン
指を揃え掌を下から上へ振り上げ犬の顎に当てる。
●シェイクダウン
犬を座らせ正面から両手で首筋をぐっと掴み、前脚が宙に浮くまで持ち上げる。
●アルファ・ウルフ・ロールオーバー
フセの体勢を取らせた後首筋をぐっと掴み仰向けにひっくり返して押さえ付ける。
そしてこれらの罰を与えた後は30分は無視し続けろと書いてあります。
本の内容は訓練だけでなく犬との暮らし方全般についてもざっくりと書かれていて、
当時の犬と初めて暮らす人には入門書として最適だったのでしょう。
犬に対する感情移入が薄い、もっと残酷な体罰を当たり前に行っていた時代に、
体罰はこのくらいにしておきなさいと規定したのはよかったのかもしれませんが、
まさかそれから40年以上後まで家庭犬に対し同じような訓練が行われるとは...
今はかわいそうだから体罰を与えるのはやめましょうというより、
心理学的に体罰を使ってその行動をしないようにしつけようとしても
うまくいかないことの方が多いですよ。
逆に犬に対し健康的にも精神的にも悪影響があるのでやめましょう。
体罰など使わなくてもやめて欲しい行動を減らす方法がありますよ。
というのが、最新のドッグトレーニング方針です。
さてその後、アメリカのドッグトレーニングは『マッチョ』全盛となります...
犬に対してチャラチャラ甘やかすのではなく「オレがボスだ!」と叩き込み、従順なしもべとしてコマンド一発で命令に応じるようにしつける方針です。
シーザー・ミランがテレビ番組で一躍有名人となった影響でこのマッチョスタイルは世界中で流行し、シーザーの物真似をするドッグトレーナー がわんさと現れました。
派手目の服装で筋肉を誇示しながらレイバンのサングラスをかけドスの効いた声で自信満々に持論を繰り広げるこのタイプのトレーナーは、なぜか共通してリードとチョークカラーが一体化したスリップリードという首を締めやすい犬具を使い、「シッ!シッ!」と言いながら首元に手刀を打ち込みます。
生徒さんたちも初めは地味な穏やかそうな雰囲気だったのに、
しばらくすると見違えるほど派手な服装にレイバンのサングラスで現れるようになったりします。
そして「シッ!シッ!」などと言いながら愛犬に手刀をくらわすのです。
この変化にそれまで犬友だった人たちもついていけなくなったりします。
多分あと5年ほどしたらこの手のトレーニングを見たら失笑してしまうのでしょうが、
今はまだその滑稽さに気づかない飼い主さんたちも少なくないのでしょうね🥵