恐怖や不安を克服するために | タンタンとパパの子犬の社会化ブログ

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タンタンは小さな頃からとても神経質で、

ある時自動車が怖いと感じてしまってから、

交通量が多い道の脇を歩くことができなくなってしまいました。

 

自動車の通る道では動かなくなり、

車が横を通り過ぎるとパニックになって逃げまどいました。

 

そこで私はあまり自動車が通らない道に面したドッグカフェで、ガラス越しに車がすれ違う瞬間に「いい子ね!」と言いながらおやつを与えてみました。

 

 

ガラス越しに車が通ることにまるで反応しなくなってからは、店の前のテラスで抱っこしながら車が通り過ぎるたびにおやつを与えることにも慣らしました。

 

そして、あまり車が通らない道を散歩しながら、車が通り過ぎた瞬間におやつを与えることに移行します。

 

 

初めは車が怖くておやつを食べる余裕もありませんでした。

 

そこで私は腕をまわして体をギュッと固定(ホールドラッピング)し、落ち着かせておやつを食べられるまで待ってから与えることを繰り返し、少しづつ食べられるようになりました。

 

それを3ヶ月くらい繰り返してした頃でしょうか、

気がつくとタンタンは自動車がすれ違うのを待つようになり、すれ違いざま目をキラキラさせておやつを要求するようになりました。

 

 

しばらくしてバイクはまったく平気になり、

普通乗用車が通ってもあまり気にならなくなっていきました。

 

そして今ではトラックのような大型車が通るとできるだけ、

目をパチパチと瞬かせて離れようとしますがパニックにはなりません。

 

このように徐々に苦手なこと不安なことに慣らしていくことを、『系統的脱感作』(けいとうてきだつかんさ)といい、

苦手な事と好きな事を同時に提示(対提示)することを、『拮抗条件づけ』(きっこうじょうけんづけ)といいます。

 

何か行動の後でいいことが起きたり悪いことが起きたりすることによって、行動が強化されたり弱化されたりする『オペラント条件づけ』とは違って、

『古典的条件づけ』とはふたつのことがほぼ同時(若干の時差が必要ですが)に起きることを繰り返すことで、なんの意味も持たなかったことが意味を持ち始めることだと考えてください。

 

 

パブロフの犬の実験では食事を目にすると唾液が出るという反射と、ベルの音(またはメトロノームの音)というなんの意味も持たない刺激(中性刺激)が、対提示(ついていじ)されることによって、

ベルの音を聞くだけで唾液が出てくる(食欲が湧いてくる)という条件づけがされました。

(古典的条件づけ)

 

タンタンは自動車がすれ違うという『嫌なこと』とおやつがもらえるという『良いこと』が同時に起きることで、自動車の不安感が和らいでそれほど嫌じゃなくなったという中和が生じたのでしょう。

(拮抗条件づけ)

 

このように古典的条件づけ拮抗条件づけの効果を使って、

犬との間に信頼の絆を作っていくことで問題行動を収束させていったり、

何かに対する『恐怖』『不安』『トラウマ』といったものの緩和や克服が可能となります。

 

 

テリー・ライアン先生のパピーブックには雷や花火の音が入ったCDが付いていて、

それを小さな音量で仔犬に聞かせながらお腹をなでなでしたり、

小さなおやつを食べさせたりして慣らしていき、

少しづつ音量を上げていくことで最終的には実際の雷や花火も怖くならないように、

馴化させるトレーニングが推奨されています。

 

 

※現在絶版になっていますので中古でも売っていたら買っておいた方がいいです!

 

 

 

夏目 真利子さんの提唱する『名前を呼んでおやつ』と言われるメソッドもこの古典的条件づけを応用したトレーニングで人と犬の関係性を良好にし悪化した関係を改善するのに役立ちます。

 

(『名前を呼んでおやつ』は夏目さんの提唱するメソッドの総称であって一つのテクニックを示す言葉ではありません)

 

何かをしたから褒めておやつを与えるのではなく、

まず名前を呼ばれること自体が嬉しいことだと感じられるようにするため、

名前を呼んだ直後に無条件におやつを与えることを何度も繰り返すことから始まります。

 

 

そして叱ることはいっさいせず、やたら否定せず、根気よく、強く優しく犬に接します。

 

常に褒めることを見つけ、「いい子ね!」「すごいね!」「えらいね!」と言って、

犬の自己肯定感を高めて行きます。

 

もちろん、やってほしくないことをやったときまで褒める必要はありません。

 

そういうときには無反応を返したり、

身体を割り込ませてすべきではないことを知らせたり(インターセプト)、

なにか別の行動を行うよう誘導したり、様々な方法で正解を知らせていきます。

 

そして『飼い主』『安心』『心地よさ』を徹底して対提示(ついていじ)していくことで、

犬の心に「飼い主と一緒ならそんなに警戒しなくていい」「飼い主のすることは自分にとっていいことなのだ」という信頼感を築いていくのです。

 

それを継続的に行なっていくと犬の問題行動(人間から見た)が、

徐々に減ったり緩和されたりしていくことに気づくでしょう。

 

私がなぜ問題行動の百貨店のような犬、タンタンとなんとか穏やかに過ごしていけるようになったかといえば、このような古典的条件づけを応用したトレーニング決して強く叱らないことで信頼関係を構築してきたからだと思います。

 

不安に対する警戒や恐怖に対する抵抗に対し『怒鳴り』『体罰』を使っておとなしくいうことを聞かせるような強引で不条理な訓練を続けていたらきっと今頃タンタンは『手のつけられない咬み犬』と言われるようになっていたでしょう...

 

 

犬との暮らし方や寄り添い方の基本方針をベースに、

犬のきもちを理解できるようにストレスシグナルカーミングシグナルを含む、

犬のボディーランゲージを読む訓練し、

犬学心理学を学び続けることが私のやっていることです。

 

大切なのは犬に対するトレーニングより飼い主が犬を学ぶこと。

 

それこそが多くの犬の飼い主さんに私がおすすめしたいことなのです…