以前ある獣医師が、通院しているわんちゃんの飼い主さんに
「お友達のAちゃんの具合が心配なのですが、大丈夫ですか?」と聞かれ、
「Aちゃんはもう長くないでしょうね。もってあと3ヶ月でしょうか?」
などと答えてしまったそうです。
聞いたその飼い主さんがAちゃんの飼い主さんに、
「動物病院で先生に聞いたわ。もう長くないんですって?」などと言ったのと、
他の犬友さんたちに話したので、Aちゃんの飼い主さんはとても傷ついて、
獣医師に「なんでうちの子の症状を勝手に他人に話したんですか?
守秘義務違反じゃないですか!」と言ったところ謝りはしたのですが、
最後に「ああ、それと獣医師に守秘義務はありませんから...」
と言われたそうです...
確かに動物には人権はありませんし、医師と獣医師は似て非なるものです。
医療法における守秘義務は獣医師にはありません...
患畜の病名や症状、施した手術などの情報をその患畜の名前などを伏せて、
ホームページやブログに記載することは、飼い主さんの了承なしに行われても、
法的には許されるのかもしれません。
ただしその患畜の症状や家庭環境などでその患畜の飼い主さんが限定でき、
その飼い主さんの対処が悪かったから治療できなかったなど、
飼い主さん個人に不利になる情報まで記載されていたらどうでしょう?
もっと言うならば、飼い主さんの名前は伏せられていても、
患畜の名前と犬種が書いてあれば、飼い主さんの名前が書いてなくても、
知り合いの人たちには識別できてしまいますよね?
守秘義務がないとしても、
個人情報保護法は獣医師にも適用されないのでしょうか?
「個人情報によって識別される個人の数の合計が過去6カ月以内のいずれの日においても5,000件以下」の小規模事業者については,個人情報取扱事業者から除外され,法に基づく義務は課されない。
とありますので、大半がそれ以下である動物病院では個人情報保護法は適用されず、
努力目標でしかなくなります。
つまり、獣医さんにとって患畜の情報を他人に漏洩することは、
よほどその獣医師が悪意で行なっていない限り民事でさえ責任を追及することは困難で、
その獣医師を名指しでSNS等で非難したりすると、
逆に名誉毀損罪や威力業務妨害罪で訴えられる可能性があるわけです。
とは言うものの、獣医師も客商売ではあるので悪い噂がたてば、
患畜を連れてくる人が減り、業務上は大損害となるわけです。
そんなに意固地になってまで患畜の情報を公開する理由はありません。
あとは個々の獣医師さんの考え方だと思います。
法的に守秘義務はなくても、自分の治療している(していた)患畜の情報や
飼い主さんの個人情報を他人に話さない。
そして、治療例としてホームページやブログ、SNSに載せる際にも、
必ず飼い主さんの許可を取り、飼い主さんが特定されないよう配慮すべきでしょう。
そして、万が一飼い主さんが特定されたとの報告があれば、
すぐにその記事を削除するのが獣医師としてのマナーであり倫理であると私は思います...