◆躁的防衛(manic defense)とは、自分の大切な対象を失ったり、傷つけたりしてしまったと感じた時に生じる不安や抑うつ感などの不快な感情を意識しなくするために行う。そのために自分は万能であり相手を支配できると思い込んだり、逆に相手の価値をおとしめたりする。一見すると楽しそうに振る舞うため「躁的」と呼ばれる
根底に対人恐怖や社交不安があり、長いことそれで乗り切ってきているので、そう簡単に緩和することはできませんが、そのままいくと、のちのち公的場面で失敗を繰り返したり、本当に心を開く段になると、怖くて気持が伝えられず、いい加減に見える態度をとってしまって、大事な人との関係がうまくいかなくなったりする心配があります。これまでも、そういうことがあったかもしれません。
こういう子の素の自分はとても繊細で、自分が傷ついたことがある分、人を思いやる心をもっています。
躁的防衛という視点から現代型の双極性感情障害を理解していくことは、とても重要だと考えています。
鬱病というのはとても苦しい疾患ですので、鬱を体験された方の中には「二度と鬱は体験したくない」と思われる程苦しまれる方もいらっしゃるのですが、この辛い憂鬱に陥らないように心が防御しようとして、躁状態になっているということも考えておく必要があるでしょう。
◆躁的防衛としての癌患者の明るさ
◆臨床心理学に「躁的防衛」という言葉があります。わざと明るい自分や元気な自分を演じることで、沈んだ気持ちに打ち克とうとする無意識的な防衛行動です。緊張の多い集団生活やストレスフルな状況に、なんとか適応しようと頑張る際によく見られます。
たとえば、ストレスが増えるとテンションが高くなり、仲間と騒いで暴飲暴食に走る。忙しくしていないと自分を保てなくなると感じ、仕事や用事を抱え込む――。こうした場合、躁的防衛によってハイテンションな状態を無理につくりだし、ストレスに対抗している可能性があります。
躁的防衛は、短期的なストレスを乗り越えていく際に、無意識のうちによく使う方法です。たとえば、新入生や新入社員は、新年度には環境が変わる緊張感から、テンションが上がってカラ元気になるものですが、3カ月もたてばたいてい落ち着きます。
しかし、長期的なストレスに対してもその方法を用いていると、心身が疲弊してしまいます。たとえば、スケジュールに穴が空くと不安になり、常に用事を入れて忙しくする。嫌なことを考えないために、お酒で気分を上げる。孤立を避けるために、毎日仲間たちと騒ぐ。こうした行動を繰り返すと、精神だけでなく、体の健康や生活にも支障が生じてしまいます。