絶対おかしい。俺はベッドの上に寝転がり天井を見上げた。栞が連絡もしないで遅れてくるなんてあり得ない。やっと来たと思ったらボロボロと泣いていた。車に乗っても無口で話しかけるのも気が引けるほど顔が青白くなり何か考えている感じだった。栞は昔から何でも1人で背負い込むとこがある。本当は今日は栞が望むなら朝までずっと一緒に居ても良かったんだが大丈夫だと言われてしまった。何をするでもなく同じ部屋に誰かがいるだけで心が癒されることもある。そんな存在になりたかったのだが。大丈夫なのかと栞の部屋の窓を見たら明かりが消えている。こんなに近くにいるのに支えてあげれないなんて不甲斐ない。栞は寝たのかも知れない。だけどもしかしたら真っ暗な部屋でさっきみたいに泣いてるかも知れない。そんなこと考えていたら栞の顔が見たくなった。泣いているなら泣き止むまで抱き締めていてあげたい。やっぱり栞の部屋に行ってみよう。そう思ってふと窓の外を見ると車が止まっていた。栞のマンションから人が出てきた。 栞のわけないよなと思って見た俺は目を疑った。出てきたのは陸だった。
『……何してやがる!!』俺は部屋を飛び出し陸に向かって叫んでいた。
『………………陸!!』
『………大地か。』
陸は俺を見るとそのまま車に乗り込もうとした。
『待てよ!何でここにいるんだよ!栞に何をした?栞には近付くなと言ったはずだ!!』
俺の言葉に振り返り車を降り俺の傍に来て余裕な顔でタバコに火をつけている。
『………知りたいか?聞かない方が良いこともあると思うが………………。』
『言えよ!!』
ふと顔に笑みを浮かべ陸は『栞をね。ヤっちゃった。無理やりだったけど。泣き叫ぶ栞も………』
『………!!おまえってやつは…………!!』
そこから先を聞きたくなくて気がついたら陸を殴っていた。栞の様子がおかしかった原因はそれか。心底陸が許せない。
『…大地。お前相変わらず栞一筋なんだな。悪いが栞は俺がもらう。どんな手を使っても。諦めないから』怒りが収まらない俺にそれだけいうと陸は帰っていった。栞が心配だ。様子がおかしかったけど陸にそんな酷いことされてたなんて。思わず俺は栞の部屋の前に立っていた。栞が出てきてくれるかわからなかったがチャイムを押してみた。3回押して出てこなかったら諦めるつもりだった。3回鳴らしてみたが栞は出てこない。仕方がないと諦めて帰ろうと歩き出したところでドアが開く音がした。振り返ると栞が立っていた。こちらを見て立つ栞の顔は今まで泣いていたのか涙でグシャグシャだ。思わず俺は栞のもとにかけより抱き締めていた。
『……………大地……』
『栞………』
今にも泣き出しそうな栞と部屋に入ると部屋は真っ暗だった。こんなに暗い部屋に1人で自分に起きたことを考えて苦しんでいたのだろう。もし俺が栞を会社まで迎えに行っていたら栞を守ってあげれたかもしれない。俺の腕の中で子供のように眠りについた栞。いつまでも俺が守ってみせる。いつまでも笑顔を見ていたいから。
陸のところから逃げてタクシーに乗り込んだ。涙が止まらない。今すぐ大地に会いたい。約束の時間から4時間もたっている。もう帰ったよね。そう思って携帯をみると大地から何回も電話が入ってる。最後の電話は1時間前だ。
さすがにもう居ないと思ったけど確かめようと思って約束の場所に行ってみた。
『……………大地!!』
『栞!!良かった無事で心配するだろ。ったく。遅くなるなら連絡くらいしろ!!』約束から4時間もたっていたのに大地は待っていてくれた。その優しさに泣きたくなる。
『…………………ごめん』『…って。お前なんかあっただろ。何があった?泣いてるだけじゃ…』
『……………大地…………会いたかったよぉ………』抱きついて泣きじゃくる私を優しく抱き締めてくれる。いつの間にか大地は私にとって自分が思っている以上に大切な存在になっていたのだと感じた。
とりあえず大地の車に乗り込みその場を離れた。
何も話せず窓の外を見ている私を大地はそっとしておいてくれた。無理に聞き出そうとしないでくれる大地が嬉しかった。大地が車をとめた。家に付いたのだ。私の方を見て1人で大丈夫かと言われたが今日は1人になりたかった。大丈夫だと言ったのだけど余程危なく見えたのだろう。私の部屋まで送ると言って聞かない。大地に部屋まで送ってもらい今日の埋め合わせは必ずするからと謝って別れた。玄関先で本当に大丈夫かと何度も聞きながら何かあったら何時でもいいからすぐ電話しろと言い帰っていった。大地が帰り部屋に1人になると涙が溢れてきた。陸が怖い。陸からレイフ゜されるとは思わなかった。体が震える…。思わず座り込んだときチャイムが鳴った。大地が戻ってきたのかとインターホンで確認すると陸が立っていた。何度もチャイムを押している。顔がイラついてるのがわかる。出ないとわかると携帯を取りだした。部屋から着信を告げる音が聞こえてきた。陸が何か伝言を入れている。しばらくして陸は帰っていった。震える手で伝言を再生すると冷たく抑揚のない陸の声が聞こえてきた。
『栞…。俺を1人部屋に残して出ていくなんて随分と酷いことしてくれたなあ。今日は少しばかり強引だったが悪いとは思わないから。栞は絶対俺のところに戻ってくる。俺…。絶対諦めないから…。』
陸の伝言を聞いたあと暫く動けなかった。どうして。どうして今さら私の前に現れたのだろう。その日は一睡も出来なかった。
着信を告げる音楽が鳴り響いている。名前を見なくてもわかる。きっと陸だ。この1週間毎日この時間にかかってくる。思ったとおり携帯のディスプレイには陸の名前が表示されていた。
『…………やっぱり。』
毎日陸から電話がかかってきていたが出ることが出来ないでいる。
不在を告げるランプだけが点滅していた。この日を境に陸から電話がかかってこなくなった。



今日は仕事の帰りに大地と食事の約束をしている。大地とは告白されてから少し距離を置いた方がいいのかなと思っていたが大地は自然に接してくるから昔と変わらない関係を保ってる気がする。でも少し一緒にいるというか大地がうちに来てる時間が増えた気がする。大地と待ち合わせた場所に行く途中に知らない男性に後ろから口を塞がれた。抵抗しようとしたが男の腕力に勝てるわけがなく何か薬品の匂いを嗅がされたところまでは覚えているのにそこから先は記憶がない。
どのくらい時間がたったのか目を覚ましたら知らない部屋に寝かされていた。部屋を見渡すと品のいい調度品が飾られている。
『目が覚めたか?』
後ろからした声に驚いて振り向くと陸が立っていた。あまりのことに言葉を失ってしまった。陸がこちらに近づいてベッドの縁に座り固まってしまった私の髪を撫でようと手を伸ばして来たが思わず体を放してしまった。陸は一瞬傷ついた顔をしたけど苦笑し話し出した。
『何度も電話を掛けたけど栞に出てもらえなかったから強引だとは思ったけど連れてきてもらったよ。』
そういうと陸は私を見た。全てをお金で支配出来ると思ってる。そんな感じがした。そう。私の父親みたいに。私の父親もお金さえあれば全てが手に入ると信じている人間だ。私はそんな父親が苦手だった。その父親と今の陸は同じ匂いがして思わず
『…………………最低。』と言ってしまった。陸は一瞬顔をしかめた。
『…………栞。5年前はごめん。俺が最低なことをしたことはわかってる。勝手なことを言ってることも。でも今度こそ栞を幸せにするから。2度と泣かせたりしないから。もう1度俺とやり直してくれないか?そばにいて欲しいんだ。』
そういった陸の言葉が空々しく聞こえる。陸に会うまでは今でも好きなのかも知れないって思ってた。でも違っていた。私たちには時間がたちすぎていた。あんなに愛して仕方なかった陸。その陸が目の前にいるのに愛しいって言葉より恐怖という言葉が頭によぎった。陸がさらに近づいてきたので逃げようとしたが手首を掴まれベッドに押し倒された。そして強引にキスをしてくる。抵抗をしようとしても物凄い力で押さえつけてくるので抵抗できない。
『陸!!!やめて!!!』泣いて叫んでも陸はやめようとしない。
『泣いても叫んでも無駄だよ。俺は栞を本当に愛してるんだ。全てを俺のものにする。邪魔するやつは許さない。たとえ大地だろうと。』そういうと陸は私を押さえつけ上に乗ってきた。『…………!!やめて!』陸は私の上に乗り片手で私の手を動けないように固定している。大柄の陸は私が抵抗してもびくともしないみたいで首筋に舌を這わせてくる。
『栞。泣いても叫んでも無駄だって言っただろ。お前も少しは諦めろ。悪いようにはしないからさ』
そう言う陸は別人のようだった。泣いても叫んでも陸は止めてくれそうにない。ワンピースのボタンもブラも全て外され殆ど裸に近い格好にされた。露になった胸は陸に吸われ片方は揉まれている。陸の手が少しずつ下に下り全てを脱がされ生まれたままの姿にされる。少しずつ陸の手の動きが早くなり次第に激しくなり陸が呻き声を出しながら私の中に入ってきた。そのうち上から聞こえる息づかいが激しくなり陸が呻き声と同時に私の上に重なってきた。どうしてこんなことになったのか。自分が情けなくて泣きたくなった。こんなときに大地の顔が浮かんで頭から離れない。大地に会いたい。私を抱き締めたまま眠りについた陸を残し気づかれぬように部屋を後にした。