俺は目を疑った。いま俺の目の前で栞と陸が抱き合っている。短い時間だったかも知れないが気に入らない。車を降りて近づいていった俺に陸の方も近づいてきたが栞を頼むとだけ言い俺の肩を叩いて去っていった。

栞を向かえに行くといつもの笑顔で向かえてくれた。俺はこの笑顔に弱い。愛しさがいっぱいになる。部屋に入りテーブルの上の花束を見て固まった。きっと陸が持ってきたのだろう。ついさっき陸が栞を抱きしめていたと思うと落ち着かない。思わず栞をきつく抱きしめた。
『どうしたの?』俺を見て微笑む栞は本当に可愛い。『栞…愛してる……。』
思わずキスをした。本当は陸のことを聞きたかったが栞の顔を見たら栞の口から陸のことなんて聞きたくなくなった。俺は栞に何度もキスをした。栞はされるがままになっている。俺は栞を押し倒し口から首筋にキスを下ろしていき服に手をかけた。抵抗するかなと栞の顔を見たら少し不安げな顔をして俺を見てる。陸のことがトラウマになってるのかも知れない。そう思った俺は付き合って半年たつのに栞とは深い関係にまでなっていなかった。さすがの俺もこれ以上待てなかったし待ちたくなかった。栞に大丈夫だと囁き服を脱がせていった。初めて見る栞の体は綺麗だった。栞の体を感じていたくて頭から爪先まで体中にキスをし愛撫した。優しく胸を吸い上げ右手で栞の一番弱い部分に触れた。栞の体がピクンと反応したのがわかった。次第に息が荒くなる。栞が一瞬小さく叫んで痙攣した。栞の力が抜けたのを見て俺は栞の一番敏感な秘部に口をつけた。逃げようとする栞を押さえつけ舐め上げていった。どんどん栞の愛蜜が溢れてくる。最後の一滴まで舐め上げたい。愛しくて仕方ない。俺だけの栞だ…。誰にも渡さない。そんな想いで栞の中に入っていった。いつまでも栞を感じていたい。俺を見上げる栞は耳まで真っ赤で可愛い。もっとめちゃくちゃにしたくて乱れた栞を見たくて思わず激しく動いていた。クチャクチャな顔で俺を見上げ小さく声をもらす栞は俺を興奮させた。栞が2度目の痙攣をしたと同時に俺は栞の中で果てた。栞と一つに慣れた喜びは想像以上だった。栞を絶対離さない。俺の…俺だけの女だ。栞を抱きしめたまま眠りについた。

今日は栞の誕生日だ。俺はカレンダーを見た。亜紀が現れたあの日。信じられないことに親父は俺に黙って俺と亜紀の結婚をマスコミに発表したらしい。テレビを見ない俺は取引先から御祝いを言われて初めて知る始末だ。俺は親父が言ってたことを確かめるために市役所に向かった。俺と亜紀が結婚しているなんて認めたくなかったからだ。俺を亜紀と結婚させるために親父がでっち上げた嘘かもしれないと思ったからだ。抱いていた僅かな望みは一瞬で打ち砕かれた。戸籍を確認した俺は溜め息をついた。俺と亜紀は親父が言った通り5年前に婚姻届けを提出したことになっていた。
『マジかよ……。』
思わず呟いていた。今はまだ受け入れてくれないが栞といつか温かい家庭を築くことしか考えていなかった俺には信じがたい現実だった。落胆して家に戻った俺を待っていたのは亜紀だった。
『………どうしてここにいる?』俺が苛立ったのがわかったのか亜紀の顔が一瞬強張った。
『勝手に入ってごめんなさい。でも2人できちんと話したほうが良いと思って……』
そう言って亜紀はポツリポツリ話し出した。5年前俺に近づいた時から婚約者だと聞かされていたこと。俺に言うとお互いを知る前に拒絶されるかもしれないから初めから俺には婚約者だと言ってはいけないことを俺の親父と約束していたと話した。本当はあのまま結婚したかったが亜紀が打ち合ける前に俺が突然出ていってしまって困ったこと。その後に妊娠がわかって、さすがに俺の親父に報告に来たこと。その時に信じて待って欲しいと言われたこと。海翔は間違いなく俺の子供であること。俺たちは長い時間話し合った。こんなに亜紀と長く腹を割って話したのは初めてかも知れない。俺に好きな人がいることも知ってるけど別れるつもりはないってこと。今は一番じゃなくてもいい。他の人を思っていても、それを全部ひっくるめて好きだから。いつか一番になれるように頑張るから別れるとか言わないでと泣く亜紀を見たら何も言えなくなった。最初は亜紀が何を考えてるのかと思ったが亜紀も俺の親父の犠牲者なのかも知れない。綺麗事じゃなく幸せにしてやりたいと思った。今は栞ほど愛しいとは思えない。でも俺のことを愛し続けてくれている亜紀に答えてやりたいと自然に思えた。今のままだと栞も亜紀も不幸にしたままだ。栞のことは今でも愛してる。他の誰にも渡したくない。その気持ちに変わりはない。でも亜紀は突然出ていった俺を恨まず親父の言葉を信じ俺に連絡することもせず一人で海翔を産み待ち続けた。普通なら出来ないと思う。そんな亜紀をこれ以上傷つけたくなかった。今すぐにとは言えないが少しずつ亜紀と海翔と3人本当の家族になっていこう。ケジメをつけるために俺は栞に会いに行くことにした。最後に誕生日の祝いに花を贈ろう。そしてちゃんと気持ちに整理をつけよう。俺は栞に贈る花束を買い会いに行った。
栞の部屋の前に立ちチャイムを鳴らす。大地と出かけるのだろう。支度を整えた感じの栞が出てきた。俺の顔を見てドアを閉めそうになったが慌てて止めた。話しがしたいと言った俺に栞は時間をくれた。久しぶりに栞を前にして愛しい気持ちにが溢れてくる。どんなに手に入れたいと思っただろう。でも俺は栞じゃなく今度こそ本当に亜紀を選ぶと決めた。そんな俺に栞は出会えて良かったと幸せになって欲しいと言ってくれた。胸に熱いものが込み上げてきて泣きそうになった。お互いに幸せになろうと別れるとき最後に栞を抱きしめた。ほんの一瞬だったけど俺には幸せな一瞬だった。振り返り歩き出した時反対側から歩いてくる大地に会った。一瞬躊躇ったが大地に近づき
『……栞を幸せにしてやってくれ。頼んだぞ。』
と大地の肩を叩いた。大地は何か言いたげだったけど軽く手を挙げて通りすぎた。心の中で栞を頼むと繰り返しながら。俺は俺なりに亜紀を愛していこうと誓った。
今日は私の誕生日。大地が迎えにきてくれるようになってる。部屋のチャイムがなったので少し早いけど大地が来たのかと思ってドアを開けた私は慌ててドアを閉めようとしたが止められてしまった。そこに立っていたのは花束を抱えた陸だったのだ。心なしか少しやつれた気がする。
『栞。誕生日おめでとう。少しだけ話せないか?』
『………………………』
『…何もしないから。話がしたいだけなんだ…。』
必死で頼んでくる陸を見たら断りきれずに思わず
『下のカフェに行こっか…。』っと言っていた。私は携帯だけ持って陸とカフェに降りていった。席に付き飲み物を頼んだ。陸は一呼吸置き話し出した。
『………この間はごめん。栞に酷いことをしてしまった…。でも栞のことが好きな気持ちは嘘じゃないんだ。栞を誰にも渡したくなくて相手が例え大地だろうと奪ってやるつもりだった。今でも出来るなら大地から奪いたい………。』
『……何いってるの?陸は結婚してるじゃない。』
『…………俺の意思じゃない…。でも…こんなことになったのは俺がダメだからだな。5年前お前を手放さなければ…。俺が悪いんだが悔やまれるよ。』そういうと陸は力なく微笑んだ。
『………………陸……』
『大地と付きあってるんだろ?あいつは昔から栞一筋だったからな。…大地と幸せになれよ。』
陸はそういった後、やっぱり悔しいなと笑った。
『…5年前 陸がいなくなったとき私を支えてくれたのは大地だった…。あのときは確かに辛かったけど陸を愛したことに後悔はしてないよ。陸と出会えたからこそ今の私がある。陸と付き合えて良かったって思ってる。あんなに自分以外の誰かを愛したことは初めてだったし、その気持ちに嘘はないから。今の私には大地が何よりも大切な存在なの。陸も奥さんと幸せになって。陸には幸せになって欲しいの…。』
陸は私が話すのを黙って聞いていた。こちらを向いた顔にはうっすらと涙が滲んでいた。私たち それぞれの道で幸せになれるよね。幸せにならなきゃね。
店を出て別れ際 陸が1歩近寄ってきた。
『……栞。最後に…最後にするから。最後に1度だけ抱きしめても…いいか?』『…………………うん』
それは本当に一瞬だったけど優しいハグだった。色々ごめんな。あとありがとう。そういうと陸は去っていった。