漂う春告げ花 | 佐渡の食と佐渡の食文化

佐渡の食と佐渡の食文化

生まれ育った佐渡の郷土の食や素材や料理法など綴っています。昭和の頃食べた伝統的な料理や素材にまつわる家族や村の話など交えて記憶に残る景色を綴っております。
株式会社創 代表取締役 東京都渋谷区代々木2-30-4 YCS2階
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ニシン

サヨリ

イカナゴ

サワラ(鰆)

春トビ

ヤマメ

各地には春を告げる魚

はいろいろある

目春と書いてメバルも

その一つ。

イワクインネンコジライレキ

春を告げるということは

たくさん取れる出盛りで旨いのか

旬を迎えて旨いのか

この魚が取れ始めるのが

ちょうど春の時期なのか

定かでない。

 

魚の旬は

沖縄から北海道に向かって

北上する

三月から四月末までが春告げ魚

と呼ばれるのであろう。

 

佐渡島では目春のことは(ハチメ)。

赤バチメ

黒バチメ

タカナ(タカラ)バチメなどが

食卓に上る。

 

流通量の差があり

黒が高価だとか

赤の方が味がいいとか

タカナバチメが群を抜くとか

色々好みもあるようだ。

 

黒バチメを本バチメと呼んだり

白バチメを黒と呼んだり様々。

 

刺身よし

塩焼きよし

煮つけよし

唐揚げよし

空焼きよし

なんでもござれの

白身の魚。

 

さばくには

背びれ

胸びれ

尖った棘があり

こいつにやられると痛い。

 

夏に帰省した兄が

一本ヤスで潜り

こいつを獲って来るが

ウェットスーツを着ないと

魚網を腰につけたら

太ももは傷だらけになる。

 

昭和から平成に年号が変わる頃

赤坂の割烹に立ち寄り

黒バチメがあった。

 

板に頼んだら好みに炊いてくれた。

 

私が佐渡島の出であることから

白ネギと一緒に

木綿豆腐も炊いて

木の芽をたっぷり

浅い総織部の鉢に盛り付け

(どうだー!)と言わんばかり。

開店したばかりの店

白木のカウンターの手入れには

仕上げに日本酒で

拭き上げるのである

しっかりと手入れしてある。

 

文句なし!

旨い!

お江戸にも春を告げられた。

 

熱燗をあおって

コートを羽織り

外に出る

どこからともなく

沈丁花が香ってきた。

春告げ花だ。