初犯刑務所からの手紙 -3ページ目

初犯刑務所からの手紙

弟からの手紙は刑務所の住所だった。

初めて服役する人達が舞台の初犯刑務所物語。



----------------------------------------------------------------------




前略、先日は忙しい中の面会、差し入れ有難うございます。感謝で本当に頭があがりません。おかげで歯医者治療を受けることが出来ます。一体幾ら位かかるのかが実際に治療を受けた人の話もバラバラでさっぱり解りません。四月の初めに申し込んだのですが未だ順番待ちです。どんな感じか分かったら報告します。大切に使わせてもらいます。

本当に有難うございます。

先日独居に移りました。本来は独居の部屋に二人で生活してます。二畳半の部屋に机二つと布団を置いているので足も伸ばせません。寝る時は布団を半分ずつ折って寝ています。それに便器には仕切りがが無いので大便の時は大変臭いです。おまけに元々は懲罰部屋だったらしく窓には目隠しがあり外の景色を眺める事も出来ません。同じ部屋の人は五十代の男性で決して悪い人ではないのですが「イビキ」「口臭」「腋臭」が原因で雑居から出された人なので大変です。

そんな自分も(足の水虫、アカギレがひどく皮がむけ部屋の中で靴下をはいているので治りが悪い為)に転居になったと一応はなっています。がそれも本当とは思っていますが本当は人間関係だと思っています。奇麗事を言うみたいですが、今までの経験もあり僕は人の悪口や陰口が大嫌いです。退屈なのはわかりますが、毎日ゝそればかり。それも完全に人を馬鹿にした言い方。それなのに本人の前では普通に接しているのだから目も当てられません。余計な口を挟んだりはしませんが一緒に笑うのは無理です。他にも八つ当たりで若いのが年配の人に何か投げつけたり、あまりの理不尽さにあきれています。

僕らは皆ここに「怒ってはならない理由を」を持って生活していますが「怒る理由」も常に発生しています。臨機応変にとは思っても一緒に悪口を言ったり、いじめじみたマネをするのはむりなのでただ黙っていると「暗い」「奴とは合わない」となったみたいです。

暗いと言われたのは生まれて初めてですが(笑)雰囲気は感じとっていたので気にはしませんが裏でコソコソと計画されたり周りの目が僕自身にのみ問題があり部屋を追い出されたみたいになったのが悔しいですね。歴史とは勝者の美談と化した話といいますが何かそんな感じです。

しかしこれが懲役だしここにいるのも自業自得。勿論僕自身にも問題がある訳ですし自分を精進させる為の修業だと思い頑張ります。二人独居も大変ですが人の悪口を聞くよりはイビキを聞いている人がマシですし(イビキには悪意は無いから)部屋も静かになったのでより勉学に励もうと思います。

今のところ人体のしくみや日本語を勉強しています。もし家に捨てる予定の勉強本、小説などがあったらいつか分けて下さいね。週刊誌でも何でも良いです。読み終わったら領置して返せますので何かあるときは貸して下さい。勉強する資料もなかなか手に入らずで…。

そんなこんなの刑務所生活ですが他は病気なども無くおかげで無事に暮らしています。一日でも早く一生懸命働いて借金を返せるように、また自分の子供達の養育費を支払える様に努力します。

間もなく梅雨にかかりますし車の運転等気を付けて(僕が言うのも何ですが)お仕事の方頑張って下さい。

ではまた手紙を書きます。 敬具


追伸

勉強をする時に電卓を使用したいのですが購入ができません。いつでも結構ですのでもし刑務所に来てもらえる時に電卓を一つ入れてもらえませんか。百円均一の電卓で良いです。頼みごとばかり本当に申し訳ありません。定期的に簿記の試験が行われているので勉強して合格を目指します。

----------------------------------------------------------------------




今回は便箋七枚の大作。かなりストレスが溜まっているようだ。




現状を嘆いては、自業自得と自分を納得させる。ノリツッコミのような繰り返しの文面である。




“そちらの世界”も一つの社会。それなりに集団生活の中でいじめ、ねたみ、そねみもある。




相田みつをではないが囚人だって「人間だもの」




しかし二畳半に机二つに便器と二人暮らしとは…。





 









090金融とも呼ばれている。090の携帯電話一本で高金利でお金を貸すという非合法の金融。金融業を営むには財務局や都道府県の許可が必要なのだがそんなものはお構いなし、暴力団が関係しその資金源になっているケースも多い。意外なことに小遣い稼ぎにやっているOLもいるらしいが定かではない。絶対にこれだけには手を出してはいけない。被害者になるだけでなく、加害者になったり、やがて暴力団の構成員になってしまうこともあるのだ。弟はその加害者になりとうとう刑務所行きになってしまった。

ヤミ金の乱暴な取り立てはマスコミにもよく紹介されているのでご存じの方も多いでしょう。しかし案外知られていないのは、加害者や仲間に引き込まれてしまう事実。

とうとう弟はヤミ金へ手を出した。ある日、突然弟から電話がかかってきた。「兄ちゃんごめんけど五万円貸してくれんやろか。」のっぴきならない状況とは感じる、詳しく聞くと組事務所に軟禁されているという。「2~3日で作ると約束して出してもらうよう頼んでみろ」と言って電話を切る。一時間ほどして解放された弟と会い話しを聞くと返済が滞り、組員が職場に現れ帰りに車に乗せられて組事務所に連れられそこから、友人・知人・親戚などに無心するよう強要されていた。

次の日、警察に二人で相談に行った。しかし警察は全く相手にしてくれない。「借りた金を返すのはあたりまえ、怪我でもさせられたのか?」まるで話にならない。まあ何かあったら来なさい、と追い返された。

もう暴力団とは縁を切りたい、とい思い私は弟に金額を聞くと全部で70万円。何とか工面して街のはずれにある古いアパート内の事務所に返済に行った。借用書を返してくれと頼んだが、代理で取り立てているのでここには無いと言いかえされた。しかしただで大金を渡すわけにはいかないと食い下がり、預かり書とかいた紙の端きれを渡された。納得いかないがこれ以上は危険なので帰ることにした。

しかしこの後、弟と音信不通になった。さらに暴力団から追い込みを掛けられていたのだ。返済したことで逆に金づると思われ、まだまだ搾り取れると見られたようだ。まずは弟に知人の健康保険証を盗ませ、無人貸出機で80万円を引き出させた。それだけではない、家電量販店に連行しローンでパソコンやデジカメを購入させ、そのまま質入れして現金化させるなど巧妙な手口で金をむさぼる。あやしまれないようにすぐに購入せず悩みながら商品を選ぶように指示をだす手の込みようだ。もう金が取れないとわかると最後には、麻薬を売って金を作ってくるようにと麻薬を渡されていた。逮捕後、弟のアパートでの家宅捜査で麻薬が見つかったが、さすがにこの件は起訴猶予となった。ちなみに私は家宅捜査に立ち会わされ見つかった麻薬を指さし証拠写真を撮られた。もう頭はパニックだった。

さんざん金をむしり取り最後は犯罪者に仕立てたり、中には構成員に引き込むなど地獄しか待っていない。

繰り返すが絶対にヤミ金には手を出してはいけない。



弟がヤミ金に手を出したのは、常識が無かったことに他ならない。もともと俗にマチ金と呼ばれる一応合法的な金融業者から五万円を借りたことに端を発する。最終的に私が25万円に膨れあがった借金を返済に行った。その業者はマンションの一室だった。看板には三つの業者の名前が書かれている。中に入ると二つ続きの机が三つの島に分かれコの字状に配置されている。仮にこの三社をそれぞれA社・B社・C社としよう。この仕組みはこうだ。まずA社から五万円を借り、利息を含め六万円を六回に分け毎週一回一万千円を返済する。一回二回は何とか返せるが三日目くらいになると支払いがきつくなる。そこでA社は内の枠はもう無いのでB社から借りて返すように勧める。今度はB社から残りの四万円を借りA社に残りを返済する。今度はB社に利息を含めた五万円を毎週返す。同じようにきつくなると今度はC社から借りてB社に返済する。

ここからがポイント、二巡目に入るのである。A社からC社の返済のためにまた借金するのであるが、完済の実績ができているため借入枠が倍の十万円に増えるのである。返済がじわじわ苦しくなり、つい枠一杯の十万円を借りてしまうのである。これが地獄の無限ループのはじまりなのだ。A社→B社→C社→A社→B社→C社→…借入額が徐々に増えながら永遠に返済を続けることになる。

弟が借りたのは五万円、私が返済に行った時には25万円。理不尽だが仕方なく返済した。A社→B社→C社と机をまわりながら数万円ずつ返済した。チンピラみたいなスタッフがたばこを吸って接客していたので、書類を待っている間にたばこに火を付けると「お客さんは禁煙ですよ」と注意された。怒髪天を衝くである。まさに常識を越えた会社であることは間違いない。驚くことに狭い部屋には客が次々と借り入れや返済にやってくる。銀行はもちろん、もはやクレジット会社のキャッシングにも頼れずに、こんな所にお金を借りないといけない人が大勢いる。

社会のダークサイドは身近なところにある。