初犯刑務所からの手紙 -2ページ目

初犯刑務所からの手紙

弟からの手紙は刑務所の住所だった。

初めて服役する人達が舞台の初犯刑務所物語。

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立秋とは暦の上、相変わらず暑い日が続いておりますが皆様は如何お過ごしでしょうか。
体調を崩されたりされてませんか。
刑務所の中も当然ですが寝苦しい日が続いております。腰痛の方は相変わらずですが虫歯を痛い所から治療させてもらっているのでおかげで随分と楽になりました。足の裏は毎日薬を塗っているのでこちらも楽になってきているのですが今から寒くなってくるとまたひどくなると思うので少し心配です。
今の生活を無駄な時間にせぬ様に出所後の自信の糧になる様にこれからも勉学、道徳に励み頑張ろうと思います。

官物の本なので古い本ばかりなのですが、やっっと百冊読みました。知らない漢字や言葉を漢語辞典や国語辞典で調べながら読んでいるので一冊を読み終わるのに相当時間がかかるのですが色々な事に興味を持つようになったと思います。歴史人物では毛利元就、政治家では福岡県出身で東京歳弁で死刑になった広田弘毅が特に心に残っております。和歌では西行法師という人の「願わくは花の下にて春死なむ、その如月の望月の頃」という歌に心を打たれました。

今年は終戦60年というのもあり報道等も多く戦争について考えるとても良い機会でしたので満州事変から南京大虐殺、従軍慰安婦問題、太平洋戦争、沖縄戦、原爆投下、終戦後のビキニ水爆事件や60年安保闘争等、色々出来る限りの祖量で調べてみました。死ぬまでに知っておかれなければならない事がまだまだある事を感じている今日この頃です。出所後もいつか落ち着いた日にはまたこういう勉強も続けていきたいと強く思っています。
文字の力を向上したくシェイクスピアの『マクベス』『リア王』に挑戦したものの僕の脳ミソでは文豪の偉大さは理解できませんでした。ドストエフスキーやヘミングウェイも読んだけど難しいです。
<中略>
僕の生活はこんな感じですが皆様はお元気でいらっしゃいますか。僕が行ってきた過ちでさらに苦しめているのではないかと危惧している今日この頃です。それと本当に申し訳ないのですがお金をあと少しだけ送って頂きたいのです。賞与金は一円も手を付けていないので必ず返します。無理ばかり言って本当に申し訳ありません。
僕は今から出所後備えて体を鍛えようと思います。一時期には72キロ程あった体重も今は56キロまで落ちました。出所後は力仕事になると思うし勤務時間も長くなるのは間違いないので体を鍛えてその時の為に体力を作っておくつもりです。
あとはトラブルも起こしたり巻き込まれたりしないようにして一日も早く出所し一日でも早くお金を返せるようにします。
度々のお願い本当に申し訳ありません。

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前回を超える6枚の大作。
最終的には無心だったのだが、その後ろめたさが長い文章になったのだろう。
お金の差し入れは郵送でもできるのだが、やはり面会に行くことにした。


 


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面会ができるのはに来るのは、基本的に家族である。面会ができるのは、平日の午前9時から午後4時まで。社会や人様に迷惑をかけた受刑者に友人、知人、まして仕事関係の人が仕事や学校を休んでまで来ることはほとんどないだろう。私も実際に面会に訪れるのは、せいぜい二ヶ月に1回程度。自営業なので少々都合は付けやすいのだが往復の行き来や待ち時間を考えると半日はつぶれてしまう。でも本当はつい足が遠のいているのである。


弟からの手紙は月に1~2度。返事を書こうと何度も便箋とペンを準備し書こうとするが、何を書けばいいのやら、考え込んでいるうちに、気が滅入って投げ出してしまう。第一、生涯、弟に手紙なんて書いたこともない。そんな事が何回が続くと「よし、面会に行こう」となるのだ。実際、合うと安心するし、弟だってそうだろう。何を話す訳でもないが、この刑務所の中で弟が生きている、という現実が確認できるだけの安心。弟にすれば「自分はまだ忘れられていない」という安心。そんな確認作業のためだけだ。


刑務所の中で弟は規則正しい生活の中にも、スネに傷を持つ男達と寝起きしている。おかずがなんだ、トイレが臭い、本を貸して欲しいなどと些細なことに一喜一憂している。外の私とくれば弟が残した借金の整理、時折警察に呼び出され盗品の後始末などに忙殺されていた。そんな二人がガラス越しにお互いが存在している事だけを確認する。それが私たちの面会という作業だった。


警察官と話すのは、駐車違反の時と財布を落とした時くらいだった。回数も時間も尋常じゃないほど警察官と話しをすることになった。場所も警察署はもちろん、がさ入れ(家宅捜査)時に立ち会ったり、一緒に被害者に謝罪に行ったりとほんの一部であるが警察の仕事に立ち会ったのだ。そこでテーマの「警察は信用できるのか?」であるが、罪を憎んで人を憎まずではないのだが「警察は信用できないが警察官は信用できる」が結論だった。縦割り行政の問題点はよくいわれるが、警察の組織自体がまさに縦割りなのである。テリトリーというか縄張りというか…。

例えばこういうことがあった。私も事情聴取(正確には違うかも?)を受けて、弟の事でいろいろな事を聞かれた。窃盗の事実自体は知らなかったので、暴力団の関与を一所懸命説明するのだが警察は弟の窃盗を起訴するための事実にしか興味がないらしく親身に聞いてくれない。自分としてはヤミ金や覚醒剤で関連した暴力団を一斉検挙して欲しいとも思ったが、そんな意欲は無いようだ。要は管轄(=テリトリー)が違うのだ。

といっても、出会った警察の人たちは、いい人がばかりだった。はぐれ刑事純情派ほどではないにしろ、いろんな相談にのってくれたり「ヤミ金の取り立てなんかが来たときはここに電話して」と携帯電話の番号も交換した。

つまりは組織のシステムには相当に問題があり、せっかく犯罪を防ぐ機会を逃している。大人の対応としては警察は市民を守る行政のサービスなので上手に利用させていただくこと。その実例は別の項でお話ししたいと思う。