病院の駐車場に車を停めるも、かなり広く受付はどこか迷ってしまう。漸く受付を探して、名前を言うと紹介状が既に届いていたので、直ぐに呼吸器外科に案内された。しかし、午後1時からの相談なのに正午には到着したため、先に昼食を済まそうと病院の最上階にあるレストランに行った。どうやら宝塚ホテル直営のレストランらしく、出てきた料理も実に美味しかった。
診察室に入ると、優しそうな外科の先生が実に詳しく悪性胸膜中皮腫がどんな病気か説明してくれ、私の病状もレントゲン写真、CT写真を観ながら分かり易く説明してくれた。
しかし、最初は手術が出来そうな先生の言葉ぶりも色々細部を見て行くに連れ、変わっていった。
結局、詳しく調べないと断言はできないが、私の現段階の病状では手術は不可能だろうと言うことだった。
本当は私は少し手術に掛けてみようと思う気持ちがあったが、ここで断れるとは流石の私も心が折れ掛けた。相談が終わった後も私は何とも言えない表情を浮かべていたようで、妹と彼女が気遣い喫茶店へ連れて行ってくれた。
ここで私は少し気持ちが緩んだのか話しをしながら涙が出てきた。
先生の話しを整理すると、肺癌は年間5万人に見つかり、うち3万人が手術をする。医学界では5年生存したら完治と言うらしい。その7割以上が完治していると言う。しかし、悪性中皮腫は被曝してから発症まで約40年位掛かると言い、発症したらその広がりは結構早く、中皮腫と分かった段階で手術できるのは10人に1人か2人らしく、今までの手術の症例も僅か100回程度だと言う。当然肺癌は手術の回数が多いので、医師の技術も凄まじく向上し完治率も高くなっているが、中皮腫は手術の回数はかなり少なく技術の進歩にも現状限界があると言う。
外科手術が期待できなくなった以上、今度はどう中皮腫と付き合って行くか考えて行くことにする。
進行が抑えられればそれだけ長生きできると思う。決して諦めはしないでおこうと帰りの車の中で誓う。