目を閉じればまた森の中にいる。
逃げ場所はここしかない。
いっしょに逃げようぜ。
ずっと奥まで行ってもうどこにいるのかわからなくなってもいいじゃん。
洞穴を見つけてずっとずっと奥まで潜っていこうぜ。
少し行くと普通に歩けるくらいの道になってた。
道は石でできていた。石は赤っぽく光ってたから不自由なく先に進むことができる。
見上げると体育館くらいの広さが広がっていて天井は岩で高くなったり低くなったりしていた。
十本の足を持つムカデみたいな生物が細かく動きながら空中を浮いてる。
それは透明な体だけど黄緑色の蛍光塗料みたいにふちどられてる。
口から金属音みたいな高い音を出しているし、よく見ると顔はスズメバチみたいだ。
ぼくらはなにか痛いことをされないかと警戒してそいつらを眺めながら急ぎ足で行くんだ。
しばらく行けば赤い目をしたコウモリが羽音をたてながら高いところを旋回してる。
すぐそこの岩場に黒くて少し体が大きいネコ科の動物がいておでこにも目がある三つ目だった。
もしかしたら毛の模様かもしれないけど不気味だからしっかり確認できなくて通り過ぎた。
そのまたずっと奥にきらりと光る出口があるから。
そこまでおまえと行くのが今日の目標だよ。
出口を抜けると見たこともないくらい透明な海と空が広がっているのさ。
水がたまっているように見える空はぜんぜん青くないんだ。
目に映るすべてが透明なんだよ。
ぼくの知っている国にはそういう島があるんだ。
その島の空気は口を閉じていても君の体にしみ込んでいくんだ。
その空気を感じたらもう死ぬこともない。
もしかして誰かが君を傷つけようとしても君は傷つかない。
永遠の快楽を身につけるんだ。
おれと逃げてきてよかったって、君にそう思ってほしいんだ。
新しいものを手に入れるには大切なものを捨てる覚悟がいるんだ。
それをわかっていないやつがあまりにも多すぎるよ。
悲しくなるぜ。
おれは噓なんか言わないよ。
おまえのことが大切なんだ。
一生。
ここにいようぜ。
誰にも気づかれないくらいずっとずっと奥に。
