にいいDr. Narong Prangcharoen
ナロン先生はアメリカの大学で音楽博士号を取得した方で、多分タイで一番有名な現代クラシック作曲家です。昨年9月まで8年間マヒドン大学音楽学部の学部長を務められていました。その間、QSサーベイという世界の大学ランキングで、マヒドン大学音楽学部を音楽分野の世界28位にまで高めた功労者です。毎年イギリスの大学評価機関が発表しているこのランキングで、マヒドン大学は東南アジア地域ではトップに位置づけられています。
作曲者としての実績も素晴らしく、米国や日本、中国でも数々の受賞歴があり、国際的に高く評価されています。今から20年前にThailand International Composition Festival (TICF)を創設して、マヒドン大学に限らず、アジア近隣国も含めて若い作曲家の育成と現代音楽の普及に努めておられます。
東南アジアの作曲家
ちょっと話は横道にそれますが、入学してからTICFなどのイベントを通じて多くのアジアの作曲家達と出会います。でもこうした国際的にも認められている東南アジアの作曲家のことは日本ではあまり知られていません。実際僕も全然知りませんでした。シンガポール出身のカーチュン・ウォンが首席指揮者を務める日フィルが今後アジア作曲家の作品も演奏してくれることを期待してます。クラシックTVや題名のない音楽会が取り上げてくれるといいのにな。
ナロン先生の教え
マヒドン大学の作曲科には現在7名の先生がいますが、国際的な舞台で活躍されているナロン先生は別格です。入学後、指導教官の希望はあるかと聞かれ気後れするところもあったのですが、マヒドンの内情をよく知るタイの方に相談したら、自分がやりたいことがあるならそれをまず言ってみるべき、相手の事情は相手が考えること、それで断られたら次を考えればいいという至極真っ当なアドバイスをもらいまして、お願いしてみました。
同時期に後期入学した博士課程の学生が二人いまして(僕は学部です)、それぞれアメリカと中国で修士号を取得した中国人で、タイで博士号取得後は本国に戻って大学の先生になるんだとのこと。その二人と並んでナロン先生からのオリエンテーションを受けました。僕の方は初対面だったし実際は面談なのかなとちょっと思ったりして。
師曰く、作曲者たるもの休みはない、学校の休暇期間中でも自分が海外出張中でもオンラインでレッスンはできるので希望があれば申し出てくれとまっすぐな目で言われ、モチベーションが上がる一方で大いにプレッシャーを感じました笑
魔法使い現る
無事希望を汲んでくれて早速翌週からレッスンを受けることになるのですが、そのレッスンは毎回、魔法を見てるようでした。僕が持っていく曲をパパッと小節入れ替えて、音高をちょっと変えて、アーティキュレーション変えたら、、、あーら不思議、とてもいい曲に聴こえる、、、っていうのを何度も体験しました。なぜそうなるのか、どういう意図があるのかを、自分も含めた多くの作曲家の作品をYouTubeで参照しながら丁寧に論理的に教えてくれます。プロの作曲家であると同時に教育者としてのレベルの高さも一目瞭然でした。
ナロン先生は、やりたい事がある人を助けるのが自分の役割と言います。自分のやり方を押し付けたりはしません。選択肢として、より洗練されたやり方を示してくれて、これを採用するかどうかはオーナーである作曲者が決めればいいというスタンスです。僕も全く同感なので、先生の修正をそのまま取り込むのではなく、指摘されたポイントの意味をよく考え、自分なりに消化してから自分の納得する音を探すようにしています。
それにしても、やりたいことを支援するのが自分の役割というのはサラリーマン時代自身がよく思っていたことでした。引退した今、それを言われるようになるというのは面白いです。もう一度高校生からやり直してるみたいなものだからそれでいいんでしょうね。そして素敵な先生方と巡り会えるのは本当にありがたいことです。
エモくない?!
初回のレッスンではこれまでに自分の作った曲を持ってくるように言われました。入学試験にも提出したDreaming babyとフーガの曲(どちらもオーケストラ編曲版)、そしてシンガポールで初演してもらった吹奏楽曲を聞いて頂きました。コメントは、曲からemotionを感じない、でした。聴く人がどう感じてほしいのかをもっと考えることって。え、そうなんだあー、そこから入るんだとちょっと面食らいました。フーガの曲も吹奏楽曲も多分に形から入ってるわけですが、見透かされてました。それはそうなんですが…
そして次は何を作るのかと言われたので、一年前に亡くなったワンちゃんの曲を作りたいと言って次回までにデッサンを持って行くことになりました。