還暦オヤジのタイ音大留学日記

還暦オヤジのタイ音大留学日記

定年退職してから音楽学校に通いだし、タイの国立大学音楽学部に入学。バンコクで音楽ライフを楽しむ還暦オヤジの日記です
趣味はピアノ、サックス、曲作り、ゴルフ、クッキーを焼くこと。最近のマイブームはタイの果物でジャム作り

「父親の曲というのはなかなか難しい。

なぜなら最高の曲でなくてはならないからだ」とナロン先生に言われたのは入学後3か月ほど経ったころ、ノンノンロンドに続くレッスン2作目として取り組み始めた時でした。

 

父親のことをどう伝えるか、どういう印象を伝えたいのか。父親のことを良く知っている人が、ああ、こういう人だったね、と感じてもらえる曲。

 

入学早々なかなかレベルの高いことを言われましたが、その通りです。重々しい運命のテーマと優しい父のテーマ、二つの旋律を交じり合わせながら父の生涯を描いていくことにしました。そして先生のアドバイスで、曲全体の構想を図と言葉にして見える化したのがこちらです。細かいので詳細見えませんがイメージだけでも。

 

 

 

この曲作りで一番苦労したのが父が難病を発病するところでした。大家族に恵まれ会社も勤め上げこれから自由な時間が増える頃、不治の病に罹ります。人生一番充実した時期に、運命がひたひたと忍び寄ってくる、それをどう表現するか。上の図で言えば8〜9分あたりで二本の線が交差していくところです。

 

ここでは上部ではまだバイオリンが快活な優しさのメロディを奏でているところに、下部でチェロとコントラバスが運命のテーマを重々しく奏で始めます。それがビオラを引き込み、第二バイオリンを引き込み、遂には第一バイオリンも運命のテーマに飲み込まれてしまいます。そんな二重構造にしました。調やテンポが違ったりするので、両者を併存させるのは容易ではなく、実際に演奏してもらって修正を重ねてようやく思うような感じになりました。

 

この曲ではソナタ形式も意識してモチーフの展開や転調も取り組んでいったのですが、言われたことの一つに、音楽は小説ではないのだから、説明するのではなく印象を伝えるべしと。形式や和声といったことにとらわれすぎて感情が表現できないのではだめということですよね。

 

Follow your heart, don’t follow the rule

 

当時の僕はどうも不協和音を避ける傾向があって、それだと楽しい箇所はいいのですが、たとえば苦悩を表すのに相応しくありません。いろいろ試行錯誤しながら悩んでいたところに「題名のない音楽会」の番組で不協和音の特集があって、これかあと思って自分としてはありえない音を入れてみたのですが、何度も聞いてるうちに不協和ではなくなってきました。先生からは感覚で出てきた音同士にぶつかりがあっても修正しなくて良い。ただregister(音域)を離すとかの工夫をすればいいというアドバイスを貰いました。不協和音もハーモニーの機能が明確であれば音域を分けるとか楽器の音色を変えるとかで解決できることが多いと。

 

他にもcall & responseの考え方だとか、colorを変える、spaceを考える、コントラストを作ることの重要性、などなど、2年近く勉強してきたいまなら多少わかることが、当時はまだよく理解できていませんでした。

 

毎週のレッスンを録音してノートに起こして読み返します。教えてもらったことで当時とても印象に残ったことも自分の備忘録として残しておきたいと思います。