子供の頃編
近所に、時々登山の帰りに父親のやっている趣味
居酒屋に現れる若者がいた。
彼は職人で、日ごろは油まみれになって働いて
いるが、休日は登山の格好で出かけることが趣味
になっている。
冬には、アイゼンとカンジキを背中にしょってかなり
本格的な登山のスタイルになる。
彼は、山手線に乗り、登山の格好をして、乗客が
どこの山に登りにいくのか、どの山に登ってきて
帰るところなのか、などと考えてのではないかと
そう想像することが至福の喜びなのだ、そうだ。
今から、40年あまり前のことだが、その当時は
変態?と思っていたが、今考えると最先端をいって
いたのかもしれない。
パチンコ屋の開店の時などにチンドン屋が扮装をして
楽器を鳴らしながら街を練り歩くのは、心もウキウキ
するものだ。街頭宣伝の昔からの方法だ。
チンドン屋の扮装には意味がある。しかし、山手線を
登山の扮装して何周も回るのには意味があまり感じ
られない。
しかし、最近のなりきりコスプレは、すっかり市民権を
得た感じだ。秋葉系やおたくから飛躍的にはってんして
しまった。
私も京都太秦撮影所で宮元武蔵に扮装したことがあ
った。
なりきって写真をとってもらうのだ。
瞬間のことだったが、とても気分がよく、楽しくて、興
奮したことを覚えている。
別の空想の人格になりきってみる。単純にストレス
解消だけではなく、新しい自分の可能性を発見する
ことの大いなる刺激剤になるのではないだろうか。
自分を内面を変化させる大きなチャンスにもなるの
だ。
そうした意味で、山手線登山姿の扮装旅行は尊敬
すべき元祖コスプレだったのかもしれない。