実は、子供の頃にも、騒音系隣人がいました。
実家の向こうの隣人は、夫婦ともに教師である4人家族でした。
二人の娘さんが、ちょうどうちの姉妹とは同い年なので、会うと絶対に成績とか身長とか聞かれますね。
もし、私のほうが優れているのなら、「あっ!えらいね。」って笑顔で褒めてくれますが、帰宅後はいつも野獣の叫び声のような変な声が聞こえます。
それは、娘さんを怒鳴る声でした。
そして、定期試験が近づくと、激しいケンカもしますね。
親子ともにコントロールを失ったので、ケンカの内容がまったくわかりませんでしたが、とにかく、叫んで相手の声を遮ろうとした意図が感じられたのです。
本当に、うるさかったです。
でも、その騒音があってよかったと思う時期もあります。
それは、高校時代のことですね。
家の近くには道端の木で自分の命を諦めた人がいました。
知らない人でしたが、近いですから、夜に一人で部屋で勉強する時には、とても怖かったのです。
臆病者である私は、勝手に怖いイメージが膨らんでいるうちに......
野獣の叫び声のような変な声が向こうから伝わってきました!
相変わらずうるさいですが、相変わらず内容がまったくわからないのですが......頭の中に膨らんでいた怖いイメージが、泡のように次々と破れていきました。
それから、騒音が「安心させる人間の声」になって、そのおかげで勉強に集中できるようになって、目指した大学に無事に入りました。
だから、元の家で隣人の騒音で困っていても、そのいつでもにぎやかな家族がいると、泥棒が来ないでしょって思えて、隣人のことが特に嫌いではありませんでした。
ケンカした後、世の中に一番嫌いな存在になったけどね。
ところで、
高卒してから、実家に帰る回数が少なくなったし、大人になって格好とか雰囲気とか、学生時代とは全然違うし、隣人のおばさんたちに会うと、みんな「知らない女性はなぜここにくる?」という顔になって、挨拶してもあまり覚えてなさそうだったので、やや寂しかったです。
その中に、私の顔を見ると、すぐに笑顔で私の名前を呼んでくれたのは、その騒音系隣人だけでした。
最後に会ったのは、結婚前でした。
実家に帰る日は、ちょうど騒音系隣人が引っ越しをする日でした。
「ただいま!」「お帰り!」ってお互いに笑顔で挨拶してから、隣人は「バイバイ!」と言いながら車で去りました。
その後、私のことを覚えている実家の隣人が1人も残らないことになりました。
ちょっと寂しかったですが、騒音系隣人の引っ越しって、ずっとそこに暮らしている両親にとって、素晴らしいことだと思いますね。