台湾では「男尊女卑(ナン・ズン・ニュー・ベー)」という言葉もありますが、普通は「男尊女卑社会」のように、社会の雰囲気などを検討する時に使っていますが、家庭の価値観などについては「重男軽女(ゾン・ナン・チン・ニュー)」という言葉を使っています。
一般人の「重男軽女」って、「男性の子孫を大事にして、女性の子孫をそうしない価値観ややり方」です。
台湾は1960~1970年の間に農業社会→工業社会になったので、その前の農業社会には男性の労働力が大事でしたから、「重男軽女」になってもおかしくありませんね。
でも、ここでは紹介するのは、死後世界の「重男軽女」です。
既婚男性も未婚男性も死んでから、お位牌が本家の宗祠に入れますが、女性は違います。
女性は結婚すれば、改姓しなくても夫の本家を自分の本家として、お位牌が夫の本家の宗祠に入れますが、未婚女性なら、自分のお位牌を入れる夫の本家の宗祠がないので、死ぬと「孤魂野鬼(グー・フン・イェ・グェー)」になります。
「孤魂野鬼」というのは、自分を供養する人がいなくて、この世に彷徨っている幽霊です。
つまり、自分の先祖に追放されて、居場所をなくしました。
悪いことをしてないのに、女性だから追放されると怒りますよね?
だから、「厲鬼(リー・グェー、人を祟る幽霊)」になって暴れる女性もいて、慰霊するために未婚女性を供養する「姑娘廟(グー・ニャン・ミャオ)」が登場しました。
もちろん、その中にも就職のために修行したり、人間を助けたりして、女神になって自分の廟をもつ女性がいます。
「重男軽女」の社会と言っても、娘を大事にしている家庭がありますから、もし、娘が未婚のままになくなったら、「孤魂野鬼」にならないように、「冥婚(ミン・フン)」を行います。
「冥婚」というのは、幽霊と人間の結婚です。
愛している相手が結婚する前になくなっても、相手と結婚したくて「冥婚」を行う人もいますが、未婚の娘を「孤魂野鬼」にならないように行う「冥婚」だったら、結婚相手を探さないとだめですね。
そのお見合い方法は、娘の私物や写真を赤い封筒に入れて、その封筒を外の道におきて、封筒を拾った男性が婚約者になります。
男性が断ると不幸になりますから、華人圏には「知らない赤い封筒を絶対に拾うな」ってタブーがあります。
ちなみに、近年は「冥婚」についてのギャグがありますが、それは、
「俺、結婚したいけど、結婚相手がいないので、冥婚でもいいと思って必死に道の赤い封筒を探した。」
「本当に見つかって、迷わず拾った。」
「その夜、夢ではどんな女性が登場するかってワクワクと寝落ちた。」
「そして、本当にある女性が登場した。」
「『あ~俺の妻!』って迎えようと思うと、女性は『封筒を返せ!』って婚約を断った。」
台湾人はプッと笑ってしまうギャグですが、日本人から見てはどうでしょうかなぁ?
では、本題に戻りましょう。
風習に影響されて「重男軽女」になってしまっても、やっぱり娘を幸せになってほしい親もたくさんいますね。
本家から独立して、新しい霊園を探して、娘が生涯独身だったら、自分と一緒にそこで供養させるやり方もあります。
女性の未婚子孫を迎える祠堂も多くなりました。
女性だから死後追放ってことは、だんだん消えてゆくと思いますね。