それからの毎日は、紅の様子を見たり、家事の手伝いをしたりする他はすることもなく、私は翠さまの後を追っかけまわしていた。
この美しい守護に、聞いてみたいことは山ほどあった。
翠さまは早朝起きると、まず一本杉の上で座禅をする。2時間ほどかけて座った後、朝食をとると、ふらっと出て行ってしまう。どうやら体を動かしに行っているらしく、昼に帰って来る時には汗だくになっている。
午後からはどこかに出かけ、夕方には帰ってくる。
帰ってくると居間でくつろいだり、わりとのんびりしている感じ。
一度修行というものについて行こうとしたが、家を出て3歩も歩いたら気付かれて、『お前にはムリ』と簡単に言われてしまった。
私は朝一本杉の下で、まねっこで座禅したりするのが関の山だった。
彼が座る時間に、私も座る。
瞑想を終えて、木の根元で座禅している私の横に降り立つと、彼はいつも笑って、
『ちび、飯食いに行くぞ』
と声をかけた。
私は知らなかったが、守護の師範は一生もので、一度決まれば他の守護が指導することはできない。
それは、守護の指導が心の問題を含むからで、余人をはさむと致命的な混乱を招く恐れがあるからだった。
だから彼は私に指導らしいことは一切しなかった。
私は彼に夢中で、いつも、
『大きくなったらぜったい妻にしてね?』
と聞いていた。返事はいつも同じ、
『ハイハイ』
だったが・・・
判を押したように同じ毎日だった。
あの日の午後までは――