暗くなってきた頃、ふすまがスッと開いて緑子様が顔を出し、ひとつうなずいて促したので、私は紅をひとり残して部屋を出た。
『豹様のお話では何週間も眠るそうだよ。お前は普段どおり生活しなければならない・・・わたくし達にも、見ているしかできないの。紅は今、華瑶苑を継承している・・・宮ならば皆通る道、大事ないよ。だいじょうぶ』
緑子様はそう言って私の肩を包んでくれた。
安心も理解もできなかったが、お腹がすいていたので、つまりこういうことだろうと思った。
居間に戻るとなんだか部屋が変わっていた。なんだか廊下が増えたような・・・?そして足元に黒豹がうずくまっている。眠っているようだけど、怖い感じ・・・
美味しそうな匂いがして見ると、これもなんだか大きくなったような食卓に、ご馳走が並んでいた。
『そろそろメシか?俺のもある?』
奥から長身で金髪の美しい男が歩いてきた。ペリドッドの瞳――このひとは・・・
『もちろんですよ、翠さま。お邪魔しております』
緑子様がそう言って頭を下げた。
翠さま・・・一度見た・・・確か碧様のお兄様で第一位の守護者とか・・・
私が記憶をたどって見ていたら、くるっと彼は私を見た。
なんという美しい造形!
最も優れたるものの証、グリーンアイズ!
『守護か。・・・なんだ?雲のにおいがするな。弟子か?』
あんまり綺麗なので目がチカチカする!
私が返事できないでいるので緑子様が答えた。
『紅子の守護になった娘だよ。雲の弟子だ』
『ああ!いたな・・・そういえば。こんなちびで三宮の守護だとはご苦労なことだ。真似できん』
翠さまはそう言うと、さっさと席に着いて『メシにしようぜ』と言った。
緑子様もユカリ姉さまも苦笑して席に着く。なんと黒豹がくるりと童女の姿になって、やっぱり席に着いた。緑子様が『豹様は姫神様の御使だよ』と教えてくれた。
残った席に私が座ると、全員でいただきますをする。
私はでも、この席のあまりな人々に圧倒されて、なにひとつ手を付けられない。
姫神様の御使様に三宮様がお二人、そして第一位の守護者・・・
紅がいてくれたら少しは違うのに。
『緑子、結構メシうまいな・・・なんだ、食べられないのか?』
私の左隣に座った翠さまが、そう言うなりおかずをひとつつまむと、ぽいっと私の口に放り込んだ!
『うまいだろ?喰えよ』
そう言って笑った。輝くような笑顔。
・・・美味しい・・・
口の中に広がった味覚が食欲を呼び覚まし、私は箸を取ることができた。
翠さまって、かっこよくって優しい!