『失礼致します。主が梅宮様を呼んでいます。案内いたしますのでついてきて下さいまし』
鸚鵡がそう言って戸口で俺を待つ。
嫌だったが立ち上がって側へ行った。菫を振り返る・・・菫はごはんの後、また眠った。
俺に命を分けるようなこと・・・小さな体で、大丈夫な訳がない。
でも、俺の体の方は不思議と重くない。倒れるほど命を絞り取られたのにも関わらず、目が覚めたときからとても楽になっている。
鸚鵡に置いていかれそうになって、気になったけど菫のそばについてるのはあきらめた――一人の方が眠れるかもしれないし・・・
はしごのような、短い廊下をジグザグにつなげたところを通って、栗宮様のいらっしゃる本殿へ行く。
見えないけど、棟は全部で3つ。本殿と、栗宮様の住居、俺たちのいる来客用の棟だ。
あたりは深いジャングルのようで、濃い霧が漂っている。
鳥の羽ばたき。
水の流れる音。
本殿は大きいがやはり天井は低く、平たい感じで、外が見通せる開放的な造りだ。
栗宮様は椅子に腰掛けていて、俺が側に来るとすぐに言った。
『そなたは守り石を埋め込むため本日より天域中を回らねばならない。そなたの両姉妹が天仙京で待っている。手伝うてやるゆえ、今より扉を開いてみよ』
相変わらず栗宮様の言葉は何を言っているのか分からない。
ひとつも俺の中に入ってこない。
今、なんて言ったんだ?
突っ立っている俺を左手でちょっと、と呼ぶので近付くと、栗宮様はまた俺の右手を取った。
凄く抵抗が走ったけど、がまんした。
『位置は天仙京の真央区、大神殿じゃ。視ゆるな?』
金色に輝く尖塔、その前に荘厳にそびえる大神殿――何度も見たその場所、忘れるはずもないけれど・・・ここはもう別の天域。どれだけの距離が存在するのかも見当がつかないほどだ。
『あれ?』
――視える。
視える――どうしてか分からないけど、よく視える。大神殿の中の聖堂に立つ、ねえちゃんたちまで、視える・・・
『扉はここと人のいない場所に立てよ。――そう、それが道・・・』
俺がまっすぐ差し出した右手のひらの先に、ピンク色の輝く扉が現れる。
それを放心して見ている俺の背中を、栗宮様は力いっぱい突き飛ばした!
『・・・・っんにすんだよ!』
振り向いて叫ぶと、呆れた顔をした緑子姉ちゃんが、
『何にもしてないわよ?ごあいさつね!』
と言った。