紅の家に戻ると人だかりはさらに凄くて、でも紅が現れると、誰もが自然に道を開ける。
まっ白い衣装の紅には、もう誰もさわりには来ない。あんなに親しげにじゃれていた男の子達も遠巻きにしてただ見つめている。
透は紅が作った道を逸れて人混みにまぎれようと考えている。
他の男の子が側にいないのに自分がこのままついて行く訳にいかない・・・
ぎゅっ。
透の手を握る。
紅はまだ、透にさよならを言ってない。
透もまだ、紅にさよならを言っていない・・・
握った手を透は無理に振りほどかない。紅の白く眩しい背中を、ただ夢のように見ている。
玄関を抜けると家の前でユカリ姉さまと緑子様、お父様とお母様、そして何人かの人々が待ちかまえていた。
誰も何も言わなかった。
お母様が「どこへ行ってたの?」とでも言うような表情をしただけだった。その顔もすぐに涙に濡れる。
『もう時間?』
紅がそう聞くと、緑子様は小さくうなずいてその場にいる人間を、建物の方に寄るように促した。