『透・・・』
私は呆然とただ見つめていた。
『いい友達だったとずっと思わせてやりたいよ・・・最後まで笑って送り出してやりたい・・・!でも、できないよ・・・ぜんぶむちゃくちゃにしてしまう・・・!』
しゃがんですべてを吐き出すように話す透を、ひとりにできなくて私は抱きしめた。
『好きだ!大好きだ・・・!でもあいつが女でも、どのみち三宮様なんだ!俺なんかが好きになっていい奴じゃないんだよ・・・!』
まだ小さい私の胸に叫ぶ透を、ただ黙って受け止めた。
透はそれからしばらくしがみついていた。
どれだけ気持ちを押さえつけようとしても、思い切ることなんかできない・・・!
もうすぐ紅は着替えて、三宮様の姿になる。
そして今でも、透がいないことを紅は気がついているに違いない。
不思議な力で、見えなくても居場所が分かるのだから・・・
『でも紅は透がどこにいても会いにくるよ』
透は呆然として、『そうなの・・・?』と言った。私はうなずく。
『そばにいてあげる』
手を取って、ぎゅっと握った。
目の前で握られた自分の手を不思議そうに見つめてから、透は私を見た。口を結んで、立ち上がった。
おぼつかない足取りで歩き出す・・・私も透も、自分と透の足元から目が離せないまま、ただ足を動かした。
そうしてただ、透の心と同化して、彼の心が静まることを願っていた。
ずっと足ばかり見ていたので、すぐ前に誰かが立ったのに気付くのが遅れた。
白い白い、美しい衣装の裾が目に入った。
見上げると、紅――
明るい茶色の髪は短く風に揺られている。
とてもシンプルな三宮様の衣装は、男の子のような紅でもすごく似合っていた。
女の子にも、男の子にも見えない・・・ただ、美しくてキラキラした眩しい存在だった。
胸元に、ひとつぶアイオライトが見えた。
『なんで二人ともこんなとこにいんだ?早く来いよ』
私も透もそれに答えない。ただ眩しく見つめて、微笑んだ。
この人は私の、透の中でいつまでも輝く朝焼けの光・・・!
その存在が心を惹き付けてやまない、ただ一人の素晴らしいひと・・・!
『ふふっ・・・』
自然に口元がほころんだ。
透も笑う。『ははは・・・』
紅はなんだか分からない顔をして、『ちぇっ、なんだよ二人して』と言うと裾を翻し、家に向かって歩き出した。
私と透は笑顔のまま、その背中についっていった。