ネオン・デーモン(2016) | 我が愛しのカルト映画

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カルト映画に限らず、主に旧作を中心に【ネタバレ】全開で映画の感想を書いています。
細かい考察はできませんのであしからず。

ネオン・デーモン
The Neon Demon
Director: Nicolas Winding Refn
★★★☆
 
 『ドライヴ』や『オンリー・ゴッド』といった、月並みな表現だが、そういう表現が一番ピッタリだと思われる「スタイリッシュな映像」でお馴染みのニコラス・ウィンディング・レフン(NWR)監督の最新作は、モデル業界に飛び込んできた女の子が体験する恐怖の物語。基本のストーリーは割と単純なんだが、どう解釈していいのか素直に理解にできないような描写もあって、それゆえにそこらへんのホラー映画とは一線を画す魅力があって、生まれながらのカルト映画の風格を湛えている。若さと美貌でのし上がってゆくジェシーが、先輩モデルの羨望と嫉妬から恐ろしい目に遭い、まさに人を喰ったような結末を迎える。自分の地位を脅かす新参者は食い物にされるということなのだろうか。ジェシーが出会う3人の女たちを魔女と解釈するのなら、赤い光に照らされた映像は『サスペリア』を思い出さずにはいられない。
 
 反復するデジタル・ビートと、シンメトリーを多用したどこか冷たい映像は、それだけで堪らない魅力を放っている。よくあるアクション映画のプロットでも、この音楽と映像のお陰で独特の世界を生み出していた『ドライヴ』と同様に、今回も病みつきになる映像がそこかしこに出てくるもんだから繰り返し鑑賞をしてしまいそうなのだ。ジェシーがカメラマンと2人きりで残された白一色のスタジオ。服を脱げと命じられ、彼女の体に金粉(?)を塗ったくられたときの戸惑いと恍惚が入り混じったような表情など、官能的なシーンも多い。そして、なによりもエル・ファニングの放つ危うい魅力。田舎出の女の子が次第に洗練されてゆき、と同時に危険な世界へと足を踏み入れていく様に、「そっちに行っちゃダメだ!」と彼女の肩をつかみたくなる衝動に駆られる。モデル業界が必ずしも悪の巣窟というわけではないが、美貌を武器にのし上がってゆく世界だけに、危険な誘惑もたくさんあるんだろうと想像する。
 
 
 モデルのオーデションで、デザイナーの前をウォークするシーン。デザイナーのオッサンは他のモデルたちには目もくれずにハンカチを手で弄んだりして、いかにも「興味ねぇ~」って感じだったんだけど、ジェシーが前に出た途端に表情がパァ~と明るくなって生唾をゴクリとする。もう、あまりにもわかりやすいもんだから思わず笑ってしまったが、考えてみると、デザイナーにとってもジェシーは「美味しそう」な存在なのだ。このデザイナーを演じたのが『フェイス/オフ』や『ジュラシック・パークⅢ』でお馴染みにアレッサンドラ・ニボラだっとは気付かんかった。
 
 ジェシーが泊まっているモーテルの部屋を荒らす山猫(ワイルドキャット)は、いろんなブログでも独自の解釈を見かけるが、山猫である必要がどこにあったんだろうか。空巣狙いのようなものでもよかったんじゃないのか。と、こういう、1回観ただけでは解釈できないような描写はレフン監督に翻弄されているようで、議論がされれば向こうの思うツボなんだろうな。それだけ仕掛けの多い映画なのだ。モーテルの管理人を演じたキアヌ・リーブスの怪演は見どころだが、ジェナ・マローンがさらに上をゆく怪演を見せる。死体相手にあんなことするなんて、ドン引くわ。
 
 
【2017年1月13日(金)鑑賞】字幕版