チベせん日記 -374ページ目

花巻紀行~多田等観展【前編】

雨の中、高速カッ飛ばして行ってきました『多田等観展』

お昼過ぎに花巻着。せっかく来たから元を取ろうとまずは宮沢賢治行きつけだった『やぶ屋』で天ぷらそば&サイダーをいただく。


食後、いそいそと花巻市博物館へ。

まず着いて驚いたのが、無い!!駐車場に車が一台しか止まって無い!!
告知不足だからなのだろうか、それとも知名度の問題なのだろうか、それにしたって今日ここに展示されているものは人類の至宝と言っても過言ではないくらいそれはそれは大変なものばかりのハズなのだが…
まぁいい。オレはただ見に来ただけだ、

見たかったんだよ花巻にこれらがあると知った10年前から!!

気を取り直して館内へ。入場料を払う。

それにしても入場料350円、あと200円プラスするとお隣の『宮沢賢治博物館』も観覧出来ますって…。
安すぎやしませか花巻市…サービスなのだろうか弱気なのだろうか、イマイチよくわからない。。

さて、ここから先はたぶんうまく書けません…。


まず入って早々、チベット国宝、『釈迦牟尼世尊絵伝』がダーッと左右に貼ってある。




一番奥真中の本尊から向かって左回りにストーリー見て回り、次いで元位置に戻ってから今度は右回りに回る。

この二十五世尊絵伝(一枚欠失)がもうとにかく素晴らしい!!

技術的にはあるいは昨今のタンカ絵師のほうが腕がが立つのかもしれないが、そんな小手先の技術論などどうでもいいくらい、やわらかな、温もりのある、色彩豊かなタッチでとにかく引き込まれる。そしてなんか不思議な動き、躍動感がある。
釈迦の世尊絵伝、つまり釈迦の生涯を連続したストーリーとして描いているものなのだが、なんというか物凄く乱暴に例えさせてもらうとつまり漫画なんですよ、『鳥獣戯画』みたいなカンジ^^;

娘が持っている暖かいミルクは湯気が立っているし、祇園精舎建設中の絵にはちゃんと職人さんがスコップで泥こねてたり、墨出ししてたり、木材刻んでたりするし、マンダラの中にマンダラを書いている絵師が描きこんであったり動物の絵なんかこれは手塚治虫が描いたのではないだろうか、いうくらいw

最後の入滅の絵にいたっては一枚の絵の中に連続して、

釈迦の涅槃

棺桶が用意される

入棺

火葬

昇天

と、四コマならぬ五コマ漫画。
これが1000年近く前に描かれたものだなんてもう到底考えられない!!

チベタンの友達が、「チベットは宗教、言語、民族、文化、どれをとっても漢族ではない、むしろインド・モンゴルに近い」
と言っていたが、絵を見るとまさにインドの影響が色濃く、釈迦はサリーのような更紗を纏っているし、兵隊たちは描かれた
時代のせいだろう、ムガール兵っぽいし、ヒンドゥーのババみたいなのはいるし、まさにインド。
そして極め付けが、いかに中国と関係が浅かったかという証拠に、龍が描かれているのだが、これがどう見てもガラガラ蛇にしか見えないw
きっと伝え聞いた“龍”を力づくの想像力で描いたんだろうなぁ^^;

正直、国立博物館あたりで仰々しく展示すべきものだと思いますが、そうなると恐らく作品との“距離”が出てしまい、本来この作品が持つ力が伝わらないと思います。
実際、試しに一歩下がって見てみたところ、1mも離れるともうこの作品の素晴らしさが分からなくなってしまう…。
それを額装はしているものの、手に触れることのできる距離で見られるのは私のような罰当たりな人間ですら大変ありがたい気持ちにさせられました。

しかも当初はなぜこれを誰も見に来ないのだろうか…と激しく謎だったが、考えてみると誰もいないので、これらをゆっくりじっくり堪能することができたというのはもう最高の贅沢だったのではないだろうか?と今は思う。
お次は等観が別れの際にダライ・ラマ13世から頂いた法王の両手形とチベット国玉璽が捺してあるカター。





チベット学者、山口瑞鳳東大名誉教授曰く、「こんなもの、世界のどこ探したってありません」というもの。
いや実際、手形、って生々しいですな。そこに生きた証し、というか温もりのようなものが感じられ猊下を目の前にしているようでちょっとドキドキしました(汗)

それからダライ・ラマ13世が自らお描きになり、等観に下賜した『ツォンカパ師弟三尊』




絵心がある、というレベルのものではない。画家の絵である。きっと帝王学のなかにこういう教育もあったんだろうなぁ。。
袈裟は直線的、というか教科書通りに描いてるな、という感はあるが、いい顔してるんですよ^^
あの国家の興亡がかかっている時期に、時間も相当かかったであろう、それでも等観の願いに応じてこれを描いて下さった猊下と等観二人の強い絆を感じる。しかもどうせ金もないのだろう、と言って額装までしてくださったとか^^;

また等観が使っていた筆箱はきっとこれも猊下から頂いたのであろう、猊下直筆の絵が描いてあり、それを拡大・印刷したものが展示されているのだが、はて?!どこかで見たことがある…と思ったら、そう黒澤明の絵コンテにそっくりなのだ。。

政治にたけ、仏法に明るく、絵ごころがあり、義に熱い。。

英明の誉れ高い13世猊下、最後にチベットの悲劇を予言してお亡くなりになったそうだが、もしかするとそれから免れるためにこうして至宝の数々を等観に託したのかもしれない。。

その他は持ち帰った仏画・経典、それに自分が使用していた僧服や靴、日用品etc..

もうね、チベットや仏教に関心のある方はちょっと無理してでも絶対に見にくるべきです!
毎年一回、開催しているようなので来年は是非!