チベせん日記 -359ページ目

ネパールよ、どこへゆく



未だネパールの混迷が収まらない。

4月10日に政憲議会選挙を実施し、ネパール共産党毛沢東主義派(以下マオ派)が第一党に躍り出たが、組閣に漕ぎ着けるまで三ヶ月もかかった。
とりあえず5月28日に選挙後初の政憲議会が開かれ満場一致で250年続いた王制を廃止し、共和制に移行することだけは決まったが、今度はその国家元首たる大統領が決まらない。

そもそもネパール史上初の大統領選出なのでその位置づけや解釈にも様々な思惑が交錯しており、なんだかとてもややこしいのだが、ややこしいなりに紐解いてみると、行政権は首相に、国の統帥権は大統領に帰属するようだ。しかし暫定憲法によると大統領の選出は直接選挙ではなく、議会の2/3以上の賛成が必要となっており、第一党とはいえマオ派は全601議席中、220議席に過ぎないので2/3はおろか過半数にも届いていない。つまり議会運営すら他党と連立を組まなければままならない。

また、マオ派以外の政党は全て反マオ派なのだが、こちらも全部足しても2/3には届かず、いづれどこかで妥協しないとこのままの閉塞感が続く。マオ派としては首相の座も大統領の座もどちらも欲しいのが本音だろうが、行政権を持つ首相の座を他党に譲るわけにはいかなかった為、野党側としては、では大統領はこちらに、という痛み分けの構図になるのは当然かと思われる。

また国の統帥権は大統領が握っているので当然国軍の最高指揮官は大統領となるが、軍にとってみれば10年も血で血を洗う戦闘を繰り広げてきたマオ派の軍門に降るなど到底考えられないことだろう。

まだある。数日前の新聞で「プスパ・カマル・ダハル氏がネパールの新首相に任命された」とあり、はて聞いたことが無い名前だな、と調べたところ、マオ派のプラチャンダ党首の実名だった。プラチャンダ、とは武力闘争していたころからの彼の偽名なのだが、武器を捨て合法的に首相に任命されたから本名を名乗りだしたのかな、と思ったらさにあらず。どうもメディアに圧力をかけたことからメディアが側が一斉に反発し、嫌がらせで実名を晒したというのが真相のよう。この国の情報ソースとしての新聞、ラジオの影響力はかなり大きい。(まぁゴルカパトラみたいな政府の提灯記事書く新聞社もあるが)特にラジオは文盲率60%、未だ電気の無い地域がたくさんあるこの国での信頼度は高い。(都市部は別だが)

とにかくネパールの政治は誰かがトップに立つと他が一斉に足を引っ張るということを延々と繰り返してきた歴史である。党利党略私利私欲ばかりで本当に国を良くしようと思っている者などはたしているのだろうか?
(お前の国も同じじゃないか、と言われそうだが…)

そういう脇の甘さがインドや中国につけいるすきを与えているのがなぜ分からないのだろうか?

面白いことにアナーキーな状態が続いているネパールだが昨年度の経済成長率はなんと6%!ネパール人の知人曰く、

「これでネパールには政府がいらないことが証明された(笑)」だってw

混迷が続くネパール、落ち着くのはいつの日か。。