ドラゴンクエストビルダーズ アレフガルドを復活せよ(ドラクエビルダーズ)(2016)

 

※ネタバレあり

【「ものづくり」の力】


本作は第一作「ドラゴンクエスト」において主人公の勇者が「りゅうおう」に敗北した可能性の並行世界を舞台に展開されます。勝者となった「りゅうおう」は人々の文明を破壊し、人から「ものづくり」の力を奪います。空は厚い雲に覆われ、光はささず、文明や街を奪われた人々は各地ヘ離散。魔物が支配する世界となり果てました。

そのような世界を覆す可能性を持つ存在。「ものづくり」の力を持つ主人公=ビルダーの覚醒から、物語は始まります。ビルダーは記憶を持ちませんが、謎の声に導かれ、自らの力を駆使して、街と文明の再生に取り組みます。

【文明発展の先に待つもの】


本作の始まりの地、メルキドの街を徐々に再生される中で、少しずつ人々は集まります。ビルダーから「ものづくり」を学んだ彼らの助力を得ることで再生は加速、街は徐々に活気を取り戻します。

このまま順調に進めば「良い話」とすることも出来たでしょう。しかし、街の再生が進むほどに文明は複雑化。街の人々から複雑化した文明を管理する必要があるとの声が上がり始めます。そして、管理の役目を担うものは、やがて支配を目論み始める。

始めは、人を救うために行われていた「ものづくり」が、やがて支配に結びつくというシニカルな展開へ舵が切られ始めます。

そして、メルキドの街に二階を作り始めると、今度はその建物が街に影を作ります。「りゅうおう」の生んだ厚い雲から光を取り戻す。かつて抱いた理想ですが、そのための「ものづくり」の果てに今度は自らの手で、街にさす光を遮ってしまう。

文明の発展の光と影の側面を、シナリオに反映するだけではなく、ゲームシステムへ落とし込み、プレイヤー自身も巻き込み展開していく様は、非常に綿密に計算されたゲームデザインがなせることと言えます。

【「やみのせんし」とビルダー】


そして、終盤の展開も練られたものです。クライマックス「やみのせんし」がビルダーの前に立ちはだかります。なんと彼の正体は勇者の成れの果ての姿。

周りからの期待にこたえる形で、自らの選択もなく、ただ魔物と「りゅうおう」の打倒の使命に没頭してきた勇者。「自分で選べなかった」というストレス、その心の隙をついた「りゅうおう」の甘言、「セカイノハンブン」に乗せられ、罠に落ち、全てを奪われた結果の姿が「やみのせんし」でした。

かつての勇者の悲劇の果て。そんな可能性の姿との対比を通して、与えられた選択肢をただ選ぶのではなく「ものづくり」を通して可能性を切り開く、ビルダーの存在意義を浮き彫りにする構成は見事という他ありません。