インターステラー(2014)

※ネタバレあり

【人類絶滅が迫る近未来の地球】

資源の枯渇のため、食料難による人類絶滅が迫る近未来の地球。優秀なパイロットとして勇名をはせた主人公ジョセフは米国政府により秘密裏に復活させられたNASAから人類存続のための計画「ラザロ計画」への参加を打診される。

「ラザロ計画」は二つのプランから成る。プランAは宇宙探索により人類移住の可能な地球に近い環境の惑星の捜索。プランBは冷凍保存された大量の人類の遺伝子をカプセルに積み込み、宇宙に向けて射出し、将来の人類種の存続の可能性を繋ぐこと。

プランAは成功率が低いものの、成功すれば現状の地球人類の全員の救済が可能。つまりジョセフの家族も救われる。プランBは成功率が高いものの、救済される人類は現状の地球人類と直接的な繋がりのない者達。つまり、ジョセフの家族は救われない。

新生NASAはジョセフを含む宇宙探査チームを送り込むことでプランA、プランBの両方の可能性を探る。基本はプランAの成功を目指しつつ、上手くいかなかった際に代替案としてプランBを実行すると説明する。

ジョセフは家族との別れを惜しみながらも、家族の未来を守るため「ラザロ計画」への参加を承諾する。プランAの成功と、その先の家族との可能性に懸けるというのだ。引き留めようとする娘を後に、ジョセフは宇宙へ旅立つ。しかし「ラザロ計画」には彼の知らない裏があったのだ・・・

【冷たい計算と血の通った感情】

「確率は低くとも、プランAには望みがある」

新生NASAの幹部ジョンのそのような説明は、全くの嘘でした。彼が解き明かしたジョセフ達の帰還のための方程式は偽り。最初からプランAに実現性はなく、プランBこそが本命だったのです。

しかし、そのような真実を説明すれば、帰還の道の立たれた計画への志願者はいなくなる。

決死の作戦への参加者を募る。そのための「偽りの希望」こそがプランA。

プランBは人類生存のためには合理的な結論と言えます。しかし、人はそのような冷たい計算ではなく、血の通った感情のために動きます。そして、それは合理性を重視する科学者とて、例外ではありません。

宇宙へ旅立った後の、ジョセフ達、「ラザロ計画」のクルー達の行動がそれを証明します。

ジョセフは、惑星探査のタイムスケジュールを「地球への帰還に要する時間」を常に考慮する形で計算します。

アメリア博士は、かつての想い人が生存している可能性のある惑星への探査を優先するように主張します。

マン博士は、宇宙漂流の孤独から乱心し、自らの生還のために仲間を窮地に陥れます。

【親子の絆】

合理性を追求するのが科学。そして、その科学が大勢を救うこともあります。しかし、いつだって科学者の動機となるのは身近な家族を救いたいという感情。血の通った感情を軽視した冷たい計算に終始してしまっては、やがて科学は限界を迎えてしまいます。

それこそ、本作のメッセージのように思えます。

だからこそ、本作のクライマックスは停滞した状況を、ジョセフと娘のマーフィの親子の絆が打開するのです。

圧倒的なビジュアルと精密な科学設定の果てに描かれたのは、親子の絆というヒューマンドラマ。

壮大なスケールと焦点の絞られた人間ドラマの結合は、視聴者に映画史上最高峰の感動を与えます。