名探偵コナン 天空の難破船(ロストシップ)(2010)

※ネタバレなし

【ミステリーは空へ】

テロ組織「赤いシャム猫」が研究所を襲撃。生物兵器が奪取されたと報じられるや、バイオテロの恐怖にさらされ、日本全土がパニックに陥る。一方のコナン一行は友人の園子の招待で飛行船「ベルツリー号」に乗船し、空にいた。今宵、「ベルツリー号」は怪盗キッドとの決戦の舞台となる。彼の狙う「ビッグジュエル」が「ベルツリー号」に展示されているのだ。

キッド逮捕を狙う警視庁捜査二課、そしてキッド最大のライバルの一人、コナンは彼の襲来に備える。しかし、事態は思わぬ展開を迎える。ヘリコプターによりテロ組織「赤いシャム猫」が飛行船「ベルツリー号」へ乗船。生物兵器を振りかざし、ハイジャックを宣言したのだ・・・

【天空のダイ・ハード】

まるで「ダイ・ハード」!本作の感想を一言で述べるならそうなります。

コナンで「ダイ・ハード」と言えば、多くの方は劇場版第5作「天国へのカウントダウン」を想起すると思います。確かに映画内において「ダイ・ハード」への言及がある。更には「ダイ・ハード」の象徴的なバンジージャンプの直球パロディシーンもある。ただ、炎上する高層ビルからの脱出という「天国へのカウントダウン」のあらすじは、どちらかというと「タワーリング・インフェルノ」のオマージュのように思えます。

翻って本作「天空の難破船」のあらすじは、より一層「ダイ・ハード」的。「ダイ・ハード」の核と言えば「閉鎖された空間における、頭脳戦」だと考えます。「ダイ・ハード」1作目では高層ビル、2作目は空港。どちらも閉鎖された空間で如何に多勢の相手を、限られた武器で制圧するかという頭脳バトルでした。

本作におけるコナンもそのスタイルを踏襲。飛行船内という閉鎖空間で、アガサ博士の探偵道具をフル活用し、アイデア満載のアクションでテロ組織を翻弄します。この一連の流れで、普段は脇に隠れがちな少年探偵団がしっかり活躍するのも良いポイント。

更には地上での平次や和葉との物語の交錯も描かれ、閉鎖空間での展開の閉塞感という弱みを払拭する脚本の妙技が光ります。

そして、アクション映画的な面白さを追求しつつ、最後には伏線を活かしたどんでん返しが展開され、ミステリー作品としての筋もしっかり通す。

さらには作中通して、キッド=黒羽快斗と蘭、そしてコナン=工藤新一の勘違いから始まる三角関係風のユーモラスな駆け引きも描かれ、過度にシリアスになりすぎないようにバランスがとられる。

アクション映画として、コナン映画として非常に高い完成度を誇る一作と言えます。

【魅力ある作品も多い】

コナン映画。根強いファンからの熱い支持を受ける初期作。新たなファンを獲得し、社会現象級のヒットまでシリーズを押し上げた近年の作品。間に挟まれる時期の作品は地味という評価を受けがちですが、魅力ある作品も多いと思います。

個人的には「天空の難破船」の他には「異次元の狙撃手」もお気に入り。

皆さんのお気に入りのコナン映画はどんな作品でしょうか。