STEINS;GATE(2011)(シュタゲ)
※ネタバレなし
【運命の始まり、思わぬ発明】

電機系を学ぶ大学生、岡部倫太郎は秋葉原の雑居ビルの一角に居を構え「未来ガジェット研究所」という発明サークルを立ち上げる。メンバーは岡部の他に、彼の幼馴染でコスプレ作りが趣味の椎名まゆり、彼の相棒にしてITのエキスパートの橋田至。
夏休みに入り間もないある日、彼は様々な怪現象に巻き込まれる。彼の目の前で突如消失する群衆。ビルに突き刺さる人工衛星。そして、死んだはずの少女、牧瀬紅莉栖との再会・・・
牧瀬紅莉栖は科学者として天賦の才を持つ少女。新たに仲間となった彼女の助力を得ることで、岡部は一連の怪現象の原因が、自らの発明品の一つにあることを突き止める。それは「電話レンジ(仮)」。岡部が拾った電子レンジに直接、携帯電話を取り付けたもので、遠隔での電子レンジの起動が可能という何とも残念感漂う発明品であった。しかし、セレンディピティ故か、その発明には作成者も予想しなかった機能が備わっていた。
それは、「過去にメールを送信する」というものだった・・・
【今すぐ見よう!】

上述したあらすじから、物語は始まります。
個人的に、ネタバレを踏んでも大抵の作品は楽しめる性分なのですが。本作については是非「ネタバレなし」で「体感」して頂きたい。サスペンスやミステリー形式の作風である点もそうですが、本作のメッセージ性上、本作を視聴し初めていだく感情を大切にして頂きたいのです。
だから、本作に少しでも興味を抱いた方は今すぐに視聴へ移ることをオススメします。
それでもまだ視聴の踏ん切りがつかない方向けに、これより「ネタバレなし」で作品紹介を行いますが、ある程度作品のニュアンスが伝わってしまうかもしれませんので、その点はご了承ください。
【人間ドラマの前半、積みあがる絆】

自らの発明、「電話レンジ(仮)」に過去へのメール送信機能を見出した岡部たちは、それを「Dメール」と名付けます。彼ら、「未来ガジェット研究所」のメンバー(通称:ラボメン)の目下の目的は「Dメール」の実証実験を行うというもの。岡部は新たに加わったラボメンの仲間達も巻き込みながら、様々な過去改変を行っていきます。
ただ、それも身勝手な行いというわけではありませんでした。
ラボメン達は、過去に様々な後悔や心残りを抱えています。そのような想いを知るからこそ、岡部は「自分の発明が少しでも、仲間の役に立てるなら」という素朴な善意から実験を進めていきます。そのような実験と交流の積み重ねを通して、岡部とラボメン達のひと夏の物語はつつがなく進行していきます。
青春映画やアニメにありがちなキラキラした青春ではありません。
「海だああああ!」とか「山だああああ!」とか、そういった華やかなものではありません。
秋葉原の一角で、ジャンク品にまみれながら、汗水流す発明と実験の地道な日々。しかし、努力の結晶として形ある発明品が生まれます。そして、発明と実験の日々を通して個性豊かな仲間達と積みあがる、確かな絆。こういう青春もアリだなと思わせる、丁寧な作劇で物語は進みます。
本作の前半は、ひと夏の青春をテーマとした丁寧な人間ドラマが展開されます。
【急転直下の後半、運命との決戦】

では、後半は?と思われるでしょうが、ここでは「ネタバレ防止」の観点から明言は控えさせていただきます。ただ、本作の後半の視聴には、ある程度の覚悟が必要ということは伝えておきます。視覚的にスプラッタな過激表現はありません。見た目上は、誰もが鑑賞できる程度にマイルドなものです。
しかし、とにかく精神的に追い詰められる展開が多い。
前半で岡部を始めとするラボメン達が魅力的に描かれます。彼らの葛藤や背景が丁寧に描写されるからこそ、後半の展開は特に胸を締め付けられる。
抽象的に表現すると、「心をすりつぶされ、ねじり切られるような感覚」に陥ります。マジで。
ただ、そのような過酷な試練の展開があるからこそ、それに抗うラボメン達の信念が、とにかく力強く映える。本作には総勢8名のラボメン、つまりはメインキャラクターが登場しますが、彼ら全員のドラマはしっかり描かれ、そのどれもが心を大きく揺さぶるもの。
中でも特に、主人公、岡部の信念と覚悟、そして奮闘のドラマが本作を最も力強く牽引します。
秋葉原の詳細な街並みの描写、個性豊かなキャラクター達、綿密な取材の元に構成されるロマン溢れる巧妙なSF設定、伏線を最大限活用する息もつかせぬサスペンス要素、そして、中心となる究極の熱量の人間ドラマ。
ひとたびハマれば、人生観を揺るがす特別な作品になるはず。
人生の中の一瞬一瞬のささやかな時間さえ、愛おしく感じるようになるでしょう。
ご興味のある方は見るべき。理由を探す方もとにかく見るべきオススメ作品です。




