007/カジノ・ロワイヤル(2006)
※ネタバレなし
【超人気シリーズ、始まりの物語】

50年以上の長きに渡る歴史を誇る、英国発祥の大ヒットスパイアクション映画シリーズ。007シリーズは主演する俳優を交代しながらシリーズを継続してきました。6代目ダニエル・クレイグ主演の第一作目のカジノ・ロワイヤル。
本作は、ジェームズ・ボンドが00エージェントに任命されてからの最初の任務を描きます。つまり、始まりの物語。見どころは、エージェントとして間もない未熟なボンドの人物像とその成長ドラマ。そして、若き彼の血気盛んな肉弾アクション。更に最初の任務を描くという点から、予備知識なしでも見れるのもポイント。本作の魅力を深堀していきます。
【壮絶にして、凄惨】

怖い、怖すぎます。敵が、ではありません。裏で糸を引く黒幕でもありません。主役のはずのボンドが、あまりに怖い。冒頭からアクセル全開。
MI6を裏切ったエージェントの抹殺を命じられたボンドが、ターゲットの潜伏場所に潜入する場面から本作は始まります。まず彼はターゲットを護衛するエージェントと交戦、その戦闘は泥臭く、凄惨。ボンドは、守りの浅い足元に攻撃を集中し、バランスを崩した敵を壁に打ち付け、そのままの勢いで水に敵の顔面を力任せに沈めて溺れさせようとします。スマートさなど欠片もない。ただ、相手の命を奪うことに特化したアクション。不安を煽る音楽とモノクロの画面が凄惨な印象に拍車をかけます。
そして、本命のターゲット、裏切りのエージェントを前にすれば、一転し銃撃一発で早々に始末してしまいます。
「二度目は、ずっと楽だよ」
戦闘時における、視聴者さえ恐怖させる圧倒的殺意。一方で銃器などの手段がある際には、命を奪うことを一切ためらわない、どこまでも冷たいスマートさ。殺意に煮えたぎる瞳と、どこまでも冷酷な瞳、その恐怖の二面性。ジェームズ・ボンドのエージェントとしての恐ろしさを視聴者に理解させる、あまりに洗練されたオープニングを経て、作品に一気に引き込まれます。
続く、マダガスカルでの敵とのチェイスシーンも壮絶。森から工事現場、更には市街地に至るまで、逃亡する敵に追いつくためならと、周囲への被害を一切顧みない、ボンドの豪快な暴れっぷりはあまりに壮絶。敵が工事現場の遮蔽物を利用し、身を隠すなら、シェベルカーを強奪し、遮蔽物をなぎ倒し、足場を破壊しながら、どこまでも追跡する。
周りの迷惑や組織人としての立場を一切顧みない暴れっぷりは、まるで暴風が服を着て歩くかのよう。正直、映画の主役としておくには本作のボンドの暴れっぷりはかなりギリギリ。表情一つ変えずに迫ってくるボンドはトラウマ級の恐怖感。
ただ、一方で突き抜けた暴れ方は映画史上トップクラスの痛快さも感じさせます。客観的にみる分には、本作のアクションは、とても面白い。巻き込まれる立場になったら、たまったものではないでしょうが・・・
【人間味と、成長ドラマ】

生身の人間かを疑いたくなるほどの暴れ方を見せるボンド。しかし、そんな彼も上司のMの叱責を受けると、どこかトーンダウン。細かい描写に人間味が宿るからこそ、ボンドにどこか引き込まれてしまいます。
後半から展開されるヒロイン、ヴェスパーとのロマンスはとても丁寧に展開されます。カジノでの敵を相手としたポーカー対決の資金についてボンドに対するお目付け役として登場するヴェスパー。
当初な立場は監視者、監視対象者と対立する二人ですが、関わりの中でお互いが抱える孤独に気づき、また交互に命を救う役目を担うことで惹かれあっていく描写には確かな説得力が宿ります。
やがて、暴れん坊のボンドもヴェスパーに対してのみは大人しさを見せるなど、成長を感じさせる点もポイント。
世界の金銭の流れを裏で牛耳る、世界の命運を左右するル・シッフルとのポーカー対決は、冒頭から中盤にかけて展開されたアクションとは毛色の異なるスリルを視聴者に与えます。ポーカーでの対決もさることながら、定期的に盤外での駆け引きも挟まることでポーカーに詳しくない人も楽しめるのもポイント。
そして、対決の果てに明かされる真実と、ボンドを待つ運命。
様々な魅力を持ちながら、若きエージェントの成長譚として手堅くまとまった一作。長きに渡るシリーズへ、本作を入り口に飛び込むのも良いのではないでしょうか。


