ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル(2011)
個人的評価:A
※ネタバレなし
【アニメと実写】

言わずと知れたトム・クルーズ主演の超人気シリーズ第4弾。IMFのエージェント、イーサン・ハント率いるチームが
国際テロ組織の陰謀を打ち砕く。つまり、おなじみの王道プロットです。しかし、本シリーズはそんなお馴染みに、どのようなアプローチで取り組むかがポイントです。
今作でプロデューサーも兼任するトム・クルーズは、監督にブラッド・バードを任命します。ブラッド・バードはピクサーのミスター・インクレディブルなどで知られるアニメ業界出身の監督ですが、そんな彼の存在は本シリーズへ良く馴染みます。
彼はアニメ的な発想で目を引くダイナミックなアクションのアイデアを次々、本作に盛り込みます。中にはアニメのキャラに向けてなら許されても人間に向けるのはどうなの?と疑問符が付くほどの過激なアクションのアイデアもあります。
通常、実写においてのアクションは担当する俳優やスタントマンの安全も考慮し、ある程度の配慮のあったうえで提案されるものです。しかし、アニメのアクションはそのようなキャラクターの安全を考慮する必要がありません。
絵やCGモデルで構築されたアニメキャラクターはケガをしませんから。
しかし、本作の監督、ブラッド・バードはトムにアニメキャラに向けるような、大胆なアクションのアイデアを遠慮なく提案します。そして、トムもまた、その要望に全力で答えます。
監督の無茶ぶりと、俳優の全力、その相乗効果は本作のアクションをシリーズ随一の高みへ押し上げます。それ自体、トム自身分かっていたことで、むしろ狙ったものでもあったでしょう
プロデューサーを兼任し、本作の製作費も出資するというのは、自分のアクションの取り組みに誰にも文句を言わせないという彼の覚悟の現れです。(通常、プロデューサーというのは、主演俳優のケガのリスクに敏感になってしまうものですから)
そして、本作のアクション、何といっても見やすい。トムの展開する壮絶なアクションを細かいカット割りで丹念に追いかけ、最も臨場感を演出できるアングルで表現します。本作のハイライトはドバイの高層ビルに張り付き登っていくトムの勇姿です。
後続の作品、「ローグ・ネイション」(2015)では空中の飛行機の側面につかまり「フォールアウト」(2018)では高空のヘリにぶら下がるなど、本作を超えるべくアクションへの惜しみない挑戦を続けるトムですが、どちらもリアル寄りの撮影とカット割りでした。
本作のアクションの大胆さとアニメ的な見やすい構成は、シリーズの名作群の中にあって、唯一無二の魅力だと思います。
【人間の底力】

アニメ的なアクションを生身の人間が全力で演じるとどうなるか。ある意味、それこそが本作のテーマに思えます。
本作はショーン・コネリー期の007のような古き良きスパイ・ガジェットが次々登場します
顔認証で即座に対象を識別するコンタクトレンズ。対象を眠らせる針の仕込まれた指輪。手のひらサイズまで圧縮された着地用クッション。背景をを投影するカムフラージュスクリーン。壁を素手でよじ登る粘着手袋。そして、おなじみの変装マスク・・・
それぞれ一定の活躍を見せ、本作にアニメ的な彩を与えつつも肝心な時に破損!最終的にはイーサンたち、チームの場当たり的な対応にすべてが託されてしまいます。
しかし、そんな窮地こそ人間の肉体の底力、チームワークが一層映える瞬間でもあります。
CG全盛の時代だかろこそ生まれるアイデアにCG抜きの生身の人間が体当たりで取り組むこと
それを最高のキャスト、スタッフで実践し、アクション映画を次のステージに押し上げる。それこそ本作の成し遂げた偉業です。


