『裏天正記・ゴア編 第七話』夢の中の刃|烈馬、喪失と悪夢の果てに見た“草”の真意とは | ゆうがのブログ

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世の中辛いよね。なんで辛いのかその理由がわかれは少しは、楽になるかも。そんなブログです。
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烈馬は闇の中を走っていた。
 背後で銃声が鳴り響き、仲間の叫びが次々と途切れていく。振り返れば、血に濡れた顔が烈馬を見ていた。
「……お前のせいだ」
 声が幾重にも重なり、烈馬の胸を裂いた。

 刃を振るおうとした腕は鉛のように重く、前に進む足は泥に沈む。
 炎が広がり、仲間の影が焼け落ちていく。

「俺のせいで……!」
 烈馬は叫び、涙で目が覚めた。

 薄暗い部屋。木窓から射す光の中で、烈馬は布団に縛りつけられていた。胸には包帯、体は動かぬ。荒い呼吸を整えたとき、傍らで眠っていた影が身を起こした。

「烈馬!」
 ミゲルが声を上げ、手を握った。
「生きていたか……!」

 烈馬の唇が震える。
「……俺は……仲間を……」
 ミゲルは首を振った。
「確かに多くを失った。だが、お前が気づき叫んだからこそ、多くが逃げ延びたんだ。忘れるな」

 烈馬は目を伏せた。胸の痛みより、心の痛みのほうが鋭かった。

 その夜、部屋を訪れた按針が机に地図を置いた。
「炎は一瞬、だが影は長く残る。未来を守るのはどちらか……考えることだ」
 言葉を残し、静かに去っていく。

 烈馬は地図を見つめた。線と印が絡み合い、百年先の光景までも描き出すかのようだった。

 眠りにつくと、夢の中に彰馬の声が響いた。
「草は刃ではない。時を裂くものだ」
 その言葉が、かつてよりもはるかに重く胸に落ちた。

 夢の終わり、失った仲間が笑って言った。
「生きろ、烈馬」

 烈馬は涙を流しながら目を覚ました。
 窓の外では夜が明け始め、白んだ空が彼を見下ろしていた。

 ――生き延びること。
 それが草の戦い。烈馬の心に、その意味がようやく根を下ろし始めていた。


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考察:草として生き延びる意味

 第七話は、烈馬にとって「静の章」です。これまでの物語では、烈馬は怒りと焦りに突き動かされ、仲間の制止を振り切って行動し、その結果として多くを失い、自らも重傷を負いました。ここで初めて、烈馬は立ち止まり、失ったものと向き合い、「草」として生きる意味を理解し始めます。

 冒頭の悪夢は、烈馬の罪悪感を象徴しています。仲間の死に際の声が「お前のせいだ」と責めるのは、烈馬自身の心の叫びです。しかしその夢の終わりで仲間が「生きろ」と言うのは、烈馬の中に芽生えつつある自覚――「生き残ること自体が役目である」という気づきを表現しています。

 ミゲルの存在は、烈馬に「救ったものも確かにある」と教える役割を担いました。烈馬が自責の念に押し潰されないのは、ミゲルの声があったからです。ここで彼は「烈馬を生かすために命を賭けた異国の友」という位置づけがより鮮明になり、烈馬にとって生涯忘れられぬ存在となるでしょう。

 また、按針の「炎は一瞬、影は長く残る」という言葉は、烈馬の視野を一気に広げました。彼はこれまで「目の前の敵を倒す」ことしか考えていませんでしたが、ここで初めて「百年先を見据える戦い」という草の理念を理解し始めたのです。彰馬の声が夢に現れるのも、烈馬がその言葉を心の奥で反芻しているからこそです。

 第七話の意義は、烈馬が「若さゆえの短慮」から「忍びの長期戦略」へと視座を変える、その入り口に立ったことです。彼はまだ完全には悟っていませんが、「生き延びることこそ勝利である」という考えが芽吹きました。これは後に、家康が“草”と名付けた意味の核心へと繋がっていきます。

 次の第八話では、この内的変化を受け、烈馬が再び行動へ戻る準備を始める章になるでしょう。そこで彼は「焦燥から動く」のではなく、「草として時を待ち、揺さぶりを続ける」という成長を見せられるはずです。