『裏天正記』第2章第4話:影名の儀 | ゆうがのブログ

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世の中辛いよね。なんで辛いのかその理由がわかれは少しは、楽になるかも。そんなブログです。
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試練を終えた夜、
火鉢の灯が再び座敷を照らす。

選ばれた六人がひざを揃え、黙して命を待つ。
そこにはもはや対立の気配は見られなかった。
残った者たちだけが知る、“命を削る静けさ”がそこにあった。

やがて、家康が静かに現れた。

「そなたらは、影となりて、この国を守る者。
名を遺すことはない。褒美も、位もない。
だが、そなたらの行いは、百年先の日の本を作る」

そう語る家康の手には、墨で記された巻物があった。
一人ずつ、彼はその名を読み上げていく。

「葛城 梅之介。理を編みし者」
「雪村 蓮。風を知る者」
「鬼頭 弥三郎。斬らずに斬る者」
「霞。声なき記録者」
「篠原 彰馬。闇を笑う者」

そして、烈馬の前に立ったとき――
家康はしばし沈黙し、目を細めて言った。

「そなたには、名を与えぬ」

一同が息を呑んだ。

「名は、すでに父より継がれたもの。
だが、語るな。
名を伏せて生き、名に恥じぬように歩め」

烈馬は、ただ一礼した。
表情は変わらず、背筋はわずかに震えていた。

その瞬間、彼の脳裏に――あの夜の記憶がよみがえった。


◆ 回想:名を捨てた日

冬の夜。
伊賀の山中、母が病に伏せる庵のわずかな灯の中。

「烈馬……お前にも、名を語らぬ生き方をしてほしい」

母は細い手で、烈馬の頬を撫でた。

「あの人の背中は、遠くて……でも、きっと何かを守っていたのでしょう。
恨んじゃいけないよ。名乗らないことは、あの人のやさしさだったのかもしれないね」

幼かった烈馬は、火鉢の炎を見つめてうなずいた。
彼は、小さな声で、ささやくように、

「……ぼくも、名は要らない。名乗るより、自らの足で歩いてみせる」

それが、彼の生き方のはじまりだった。

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📝考察:「名をもらえなかった男」の覚悟とは


■ なぜ烈馬だけ“影名”を与えられなかったのか?

家康が烈馬に名を与えなかったのは、血筋への期待や特別扱いではなく、むしろ“名を伏せ続けるという罰”であり“覚悟の証”として描かれています。

烈馬にとって、それは「栄誉」ではなく、「十字架」に近いものです。


■ 回想パートが意味するもの

烈馬の母が言った「名乗らないことがやさしさだったかもしれない」という言葉は、
父・服部半蔵の“忍びの愛情”を滲ませる重要な一節です。

烈馬が無言で任務に挑む姿は、
名を語らずとも「忠」と「誇り」を継いだ者としての静かな証明であり、
それこそが「草」の本質であると言えるでしょう。


■ 次回予告:密命、海外へ

次回、正式に「草」となった六人は、いよいよ初任務へと出立します。
向かう先は、異国・ルソン。
その地で待つのは、言葉も、信仰も、刀も通じぬ“静かな戦場”。

彼らの影が、初めて日本を離れます――。