紫陽花とステンドグラス | "little magazine"

"little magazine"

架空の雑誌"little magazine"のライターとして、詩や自由奔放な散文を書いてます:)

6月 休日に上野へ出かけた。

この季節の不忍池は素敵だ。

大きな池に沿って歩いていると、
クチナシの花の香りが漂ってくる。

鳥たちは騒がしく鳴きながら
エサを求め飛び回っている。

ニレの木の枝垂れは、涼しいカーテン。
スワンボートを漕ぐひとたち。

ベンチに座って、
その光景をぼんやり眺める人たち。

初夏の季節、不忍池の風景は、
まるで印象派の絵画のよう。



しばらく歩くと、紫陽花が
たくさん咲いている場所に辿り着く。

ここの紫陽花は、沢山の種類があり
とても見応えがある。

みんな紫陽花と写真を撮ろうと、
様々にポーズをとっている。





子供の頃、紫陽花の花を
不思議に思っていた。

四角い花弁が集まった球体の花。

どこか、幼稚園にあった
ステンドグラスの窓と似ている。

紫陽花はガラスで出来た花だろうか?

ステンドグラスと紫陽花は、
似ているけれども違うもの。



不忍池で紫陽花の写真をたくさん撮り、
そろそろ帰ろうかと思った頃

ふと、『旧岩崎邸庭園』の表示を見かけた。

名前は聞いたことがある。
ここから近いみたいだ。
ちょっと、行ってみようか?



細長い道をてくてく歩いていくと、
旧岩崎邸庭園に辿り着いた。

その瞬間、
思わず「あっ」と、声が出た。

お城みたいな大きな洋館が
道の先にそびえ立っている。

まるでヨーロッパの小さなお城のようだ。




館内に入ると、
豪華絢爛の世界がひろがっていた。

ため息が出るような
ジャコビアン様式のエントランスホール。

暫くしてそこを抜けると、
通路は、少しほっとするような
生活空間へと続いていた。


洋室の部屋には飴色の家具。
和室の部屋には見事な建具。

縁側の向こうには、
江戸時代から続く庭園が望める。

アサガオの形のランプ
家紋をあしらった欄間
ステンドグラスの窓

ここは、明治時代から
時間が止まってしまったかのようだ。


もうここには誰も住んでいないけれども、

子どもたちが部屋で勉強をしたり、
大人たちが居間でお茶を飲んでいたり、

そんな時空を超えた、
人の気配が感じられる神秘的な空間だった。



洋館を出てふと頭を上げると、
道の向こうに大きなネムの木があった。

久しぶりに見る、ネムの花。
ピンク色の綿菓子のような花がたくさん。

紫陽花と梔子、合歓の花。
明治時代の洋館とステンドグラス。


素晴らしい時間旅行をしたような気分・・

夏の始まりに
私の心は、不思議な嬉しさで
いっぱいになった。