第五章 市ヶ谷(2)
【 三光坂 】①
東京・港区白金
長く伸びる古びた塀
さて、あの戦争を考えるときに、この七人に死刑判決を下した東京裁判というものを避けては通れません。
東京裁判をめぐる議論は靖国問題とも絡まっていますし、さまざまな評価、解釈があり、また研究や著作も多く見られます。
もちろん僕はそれを研究してきたわけでもなく、それらの記述から知識を得たに過ぎないので、ここで多くを論じることはできません。
ただ、あの裁判からもうすぐ80年近く経とうとするいま、少なからず誤解があり、それが通説になっていることもあります。
だからあえて、平和の大切さを次世代に伝えるという僕の立場から、これから少し東京裁判を語ってみたいと思います。
東京裁判に触れるのには伏線がありました。再びミンスクにやってくるほんの少し前、世田谷だけでなく渋谷や三田、六本木あたりまで足を伸ばすようになっていた僕は、ある場所をなぜか頻繁に通るようになっていました。
恵比寿から恵比寿通りを真っ直ぐ東に進み、「三光坂下」の交差点を右折して坂(三光坂)を上りきったところ。
世に言う高級住宅街の中に伸びる、古びた長い塀。
「ここはナニ?」
と思う不思議な一角があるんですね。
好んで通っているわけでもないのにこれだけ繰り返し何度も行き来させられるというのは、これまでのいきさつからすると、また何か新たなお告げなんだろうとは感じていましたが…。