次世代への伝言 #104 第四章 沖縄の海(3) 洗脳と強制⑧ | 少年飛行兵 と 私 第二幕〜Thoughts About Peace

少年飛行兵 と 私 第二幕〜Thoughts About Peace

2014年、突然閉鎖したブログ「少年飛行兵と私」
特攻隊員だった「彼」の遺志を確かめた僕は、「少年飛行兵と私 第2幕」として新たな旅を始めます

第四章 沖縄の海(3) 

【 洗脳と強制 】⑧

 

少飛14期 椿さんの手記

 

特攻志願ー

 

現実に「死」に直面したとき、彼らにはさまざまな葛藤があっただろうと思います。

 

これを裏付ける記述もあります

 

小飛会監修の写真集「あゝ少年飛行兵」(大盛堂書店 1970年)の中にある14期、椿恵文さんの手記です。

 

「生と死の間で」と題された手記の中で椿さんはこう語っています。(抜粋して掲載させていただきます。)

 

廊下に大股の靴音が近づいてきたかと思うと、部屋の扉が荒々しく開かれ、当直士官の井上少尉が、緊張した表情で現れた。

 部屋に入ってきた井上少尉は、ふるえをまじえた大声で、

 

「隊長よりの御指示、空勤者はそのまま聞け……。

本隊はいよいよ第一回目の特攻隊編成の命を受けた。諸氏はいずれも志願したいことと思う。

選抜の関係上、ただ今より各人五分おきに隊長室に行き、特攻隊、参否を隊長殿に申告すること。

順は第一中隊より、終り」

 

  (中略)

 

いよいよ来るべきものが来た……私は息の詰まりそうな重ぐるしさに襲われた。

 

私たちは比島戦で、特別攻撃隊が編成され、レイテ湾頭に散ったということを知っていた。

しかしそれは正直なところ何か別の世界の出来事のような感じで、現実がこのような形で、同じように自分の身に迫って来るとはいままで少しも考えていなかった。

 

心のどこかに敵の軍艦に飛行機もろとも己の肉体をぶつけるという自殺行為をやるという先輩たちの考え方にはとても理解し難い気持ちが心の隅に残っていた。 
 

だがいまそれが突如自分自身の問題となったのだ。もはや冷静な批判などはできなかった 

 

黒い死の手を差し伸べられたような感じであった。

 

私はどうしていいかわからなかった。

 

なんと隊長殿に答えるか。頭の中は冷静な思考力を失って混乱し、ただ焦るばかりであった...

 

つづく