第一章 ミンスクの青い空(3)
【トビリシでのできごと】⑥
C130輸送機に搭乗して硫黄島へ...
「殉国七士墓」を辞して駐車場に戻ると、黒い大きな虫が僕の頭上をぐるぐる回って離れないんです。どんな虫なのかはわからないけれど、とにかく大きいんですよ。数匹いました。山の中だからいろいろな生き物がいるだろうし、それくらいの虫が飛び交うのは何も不思議なことじゃないです。だからこのときは特別気にもかけることはありませんでした。
そしてその数日後、僕は自衛隊機で硫黄島に降り立ちました。
硫黄島内では陸海軍各部隊が守備していた場所に、部隊名が刻まれた石碑が立っています。
僕はそれらの石碑や兵士が立て籠った壕の前で毎日ひたすら
「ご苦労さま」
と口にしながら手を合わせて回ったんですね。
壕に残るヘルメット...
七十数年経った今でも激戦地としての姿を残すこの島を歩くと、兵士たちは決して楽な死に方をしていない、ということは容易にわかりますし、それは体で感じます。
最後の突撃壕
1945年3月26日 栗林中将ら残った将兵たちは
この壕を出て最後の突撃に向かったとされる
亡くなった兵士たちにかける「ご苦労様でした」という言葉は自分自身の言葉であり、また東條の代理としての言葉でもありますが、それは本当に心の底から自然に出てきます。
湧き出てきます。
硫黄島はそんな場所です。
硫黄島に入って三日目だったですかね…
その日も数珠片手に歩いていると...