台湾支援には広い視点を持った対応が必要/尖閣諸島対応のために国産品の継続購入を | 上下左右

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台湾の早期TPP加入を応援する会の代表。
他にも政治・経済について巷で見かける意見について、データとロジックに基づいて分析する・・・ことを中心に色々書き連ねています。

つい先日中国が台湾のパイナップル輸入の停止措置を発表したことを記事にしたところですが、 日本を初めとする数ヵ国が早々に手を挙げ、中国向け輸出分を消費できる目処がたったようです。

 

 

記事によると日本の輸入量は5000tに達する見込みとのことで、2020年の輸入実績の約2.3倍にもなります。これは恐らく「これまで日常的にパイナップルを購入していた層が台湾産に切り替える」ということではなく、「報道を見て台湾を応援するためにパイナップルの購入を決めた」という層が多いのではないかと思われます。

このように国内の総パイナップル消費量が増えるということであれば何の問題もないのですが、輸入業者が購入を決めてから消費者が購入するまでには時差があります。そもそも台湾のパイナップルの収穫のピークは5~6月ですので、この時差により台湾応援熱が少し冷めてしまうと、「普段購入しない層」はパイナップル売り場に向かうこともなくなるでしょうし、「普段から購入している層」は日常的な流れでパイナップル売り場へ行き、「台湾産」のラベルを見て台湾への応援を思い出し、台湾産パイナップルを購入していくことになります。

そうなると、もともと「普段からパイナップルを購入している層」が台湾産を購入する分、割を食って消費が減少するものが発生します。輸入パイナップルの97%はフィリピン産ですが、台湾産パイナップルの単価はフィリピン産の約2倍であり、もはや別カテゴリーと言ってよいでしょう。用途も輸入量も異なるタイ産を除くと、台湾産パイナップルは他の産地の輸入パイナップルよりも圧倒的に高価なのです。



つまり台湾産パイナップルと競合するのは他の輸入パイナップルではなく、高価な国産品となってしまう可能性が高いと言えます。パイナップルの自給率は4.5%と非常に低く、生活必需品よりも嗜好品に分類されるものなので、産品だけ見れば保護する価値は低く見られがちですが、数少ない産地の一つが尖閣諸島を行政区に持つ石垣市です。つまり台湾産パイナップルに押されて石垣市のパイナップル産業が衰退すると、尖閣諸島を巡る最前線が弱体化することに繋がりかねないのです。

仮に今年台湾産パイナップルが5000t輸入されると前年比+2856tとなり、昨年の国産パイナップル生産量の約4割に匹敵します。たかがパイナップルと思われるかもしれませんが、台湾の蔡政権はパイナップル産業の損失を補てんするために3580万ドルもの支援を約束しており、日本という国単位でみればそれほどの金額でなくとも、一地方へ与える影響としては非常に大きな金額と言えるでしょう。もちろんこの金額すべてが対日本に向けられるわけではありませんが、数少ないパイナップル産地へ与える影響は決して無視できないものになります。

 

最近の尖閣諸島をめぐる中国の言動を踏まえると、中国が台湾のパイナップル輸出を停止した背景には石垣市へダメージを与えることが理由の一つにあるのではないでしょうか。「親台湾である日本は必ずパイナップルの輸入拡大を行う」という確信があったからこそ、中国もこれほど露骨な行為を行ったのではないかと思います。

台湾への支援自体を問題視するわけではありませんが、優先順位を間違えてはいけません。先月には中国で海警法が施行され、今は特に尖閣諸島が重大な危機に晒されつつある状況です。中国が見せた「餌」に飛びつくのではなく、広い視野を持った対応が必要なのです。

台湾を支援するのであれば、同時に国産品の支援も訴えていきましょう。