1月の雇用状況/総合的な状況は前月と変わらず | 上下左右

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台湾の早期TPP加入を応援する会の代表。
他にも政治・経済について巷で見かける意見について、データとロジックに基づいて分析する・・・ことを中心に色々書き連ねています。

3月2日発表の労働力調査(総務省)によると、2021年1月の完全失業率は2.9%と前月比では▲0.1%改善、前年比では+0.4%悪化と前月からやや改善傾向となり、有効求人倍率も前月の1.06倍から上昇して1.10倍となりました。但し就業者数は前月の6666万人から6637万人と引き続き減少しており、雇用統計の総合的な評価としては前月からほぼ横ばいというところでしょう。
1月は11都府県で緊急事態宣言が発令されたため当然のごとく休業者は増加しましたが、それ以外では大きな悪化は見られませんでした。

 
◯就業者の業態内訳
就業者全体では▲50万人ですが、その内訳は下記のとおりです。(いずれも前年比)
・自営業主・家族従業員:+8万人
・正規雇用:+36万人
・非正規雇用:▲91万人
 
前月比では下記のとおりです。
・就業者数:▲29万人
・自営業主・家族従業員:▲14万人
・正規雇用:+18万人
・非正規雇用:▲35万人
1月はGoToキャンペーンの停止と大都市圏で発令された緊急事態宣言の影響もあり、前年比はもちろん前月比でも非正規雇用者は大きく減少しています。その一方で正規雇用者は改善という結果となりました。なお1月の正規雇用は3年連続で前年比増となっており、正規雇用についてはアベノミクスから継続して増加傾向にあることがハッキリと見て取れます。
 
◯業種の内訳
前年比で大きな動きがあったのは下記の業種です。
医療・福祉:+29万人/+3.4%(前月比+6万人
建設業:+22万人/+4.8%(前月比▲16万人)
宿泊・飲食業:▲39万人/▲9.6%(前月比▲17万人)
卸売・小売業:▲22万人/▲2.0%(前月比+10万人)
製造業:▲14万人/▲1.3%(前月比▲8万人)


前年比の増減についてはほぼ11~12月と同じ傾向となっており、繰り返しになりますが、やはりGoToキャンペーンの停止と緊急事態宣言の再発令の影響が響き、宿泊・飲食業の減少が目立ちます。また先月まで4ヶ月連続で増加していた製造業が、今月は前年比・前月比ともに減少となり、若干の先行き不安を感じさせます。
 
◯失業者の内訳
<前年同月比>
・完全失業者:+38万人
・自発的離職者:+3万人
・非自発的離職者:+24万人
・収入を得る必要が生じたための求職者:+8万人
 
<前月比(季節調整済)>
・完全失業者数:203万人。前月比▲7万人
・自発的な離職:±0万人
・非自発的な離職:▲1万人
・新たに求職:+5万人
概ね12月から変化はありません。完全失業者が若干減少した一方で新たに求職する方が増えておりますが、就業者数は前月比▲1万人とほぼ横ばいで非労働力人口は前月比+13万人となっておりますので、失業率の改善は就業者数が増加したのではなく労働力人口が減少した(=求職をやめた人が増えた)ことが原因であると言えそうです。

◯休業者の推移
2020年1月:194万人
2020年2月:196万人
2020年3月:249万人
2020年4月:597万人
2020年5月:423万人
2020年6月:236万人
2020年7月:220万人
2020年8月:216万人
2020年9月:197万人
2020年10月:170万人
2020年11月:176万人
2020年12月:202万人
2021年1月:244万人

<正規雇用>
2020年1月:82万人
2020年2月:86万人
2020年3月:89万人
2020年4月:193万人
2020年5月:126万人
2020年6月:83万人
2020年7月:85万人
2020年8月:87万人
2020年9月:88万人
2020年10月:77万
2020年11月:81万人
2020年12月:89万人
2021年1月:95万人

<非正規雇用>
2020年1月:67万人
2020年2月:70万人
2020年3月:118万人
2020年4月:300万人
2020年5月:209万人
2020年6月:99万人
2020年7月:86万人
2020年8月:80万人
2020年9月:69万人
2020年10月:60万
2020年11月:59万人
2020年12月:64万人
2021年1月:88万人
 
1月の休業者数は昨年6月以上の数字にまで増加しましたが、昨年緊急事態宣言が発令された4~5月には400~500万人を超えていましたので、1月はその半分程度に留まりました。もちろん非常に多い数ではありますが、昨年緊急事態宣言が発令された4月には休業者が一気に前月比350万人も増加したことを踏まえると、緊急事態宣言が11都府県に限定されているとはいえ前月比+42万人というのは危惧したほどではなかったというのが正直な印象です。
4~5月に比べれば休業者への手当てもかなり拡充されていますので、是非積極的に活用してもらいたいと思います。マスコミは政府広報ではないので政策を伝える使命はないそうですから、何とか広く伝える方法を考えないといけませんね。
 
2月は最初から最後まで緊急事態宣言が解除されませんでしたが、人出は明らかに増加しており、雇用状況も多少は改善しているものと思われます。首都圏ではさらに2週間延長する方針とのことで、卒業旅行シーズンにGoToトラベルを間に合わせることを今年度希望にしていた飲食・宿泊・旅行業者の絶望感は耐え難いものがあるでしょう。
次の旅行シーズンはGWでしょうか。その時期はまだワクチンの一般接種も始まっていませんが、新型コロナウイルスの感染状況が収束していることを切に望みます。