TPPの盟主として日本は中国の認識違いを示せ/友好国台湾の苦境 | 上下左右

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台湾の早期TPP加入を応援する会の代表。
他にも政治・経済について巷で見かける意見について、データとロジックに基づいて分析する・・・ことを中心に色々書き連ねています。

中国国務院(政府)台湾事務弁公室の朱鳳蓮報道官が12月16日に、台湾が環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)参加に意欲を示していることについて「台湾の地域経済協力への参加は、一つの中国の原則に基づいて処理しなければならない」と述べて牽制(けんせい)したと報じられています。


そもそも台湾は主権を有する独立国ですが、仮に中国の主張どおり『一つの中国』だったとしてもTPPの加入要件に『主権を有する独立国であること』という項目はありません。
つい先日、TPPの新規加入の流れを記事にしましたが、TPPへの加入要件は正確には下記のとおりです。
(a)APECに参加する国又は独立の関税地域
(b)締約国が合意する他の国又は独立の関税地域

台湾はAPECに加入していますし、何より台湾と中国との貿易にすら一部品目について関税がかかっていますので、台湾が完全に独立した関税地域であることは中国がどう言い繕っても否定できない事実です。更に言えば台湾はニュージーランドやシンガポールなど9つの国と個別の8つのFTAを締結しており、今さらTPPだけ締結できないというのは単なる言いがかりに過ぎません。
当然そんなことは中国もわかった上で発言しており、これはTPPの、特に東南アジアの加盟国に対する『中国に逆らわずに台湾の加入には反対しろ』という警告なのでしょう。コロナショックから西側先進国は脱中国を進めていますが、過去記事[中国との関係を深化させる東南アジア諸国 親中国/脱中国の鍵は日本]に書いたとおり、逆に東南アジアは中国との関係を深化させており、その影響力は強まるばかりとなっています。
今こそ日本はTPPの盟主として、主権を有する独立国でなくともTPPに加入できるというルールを示すことで、台湾の加入は中国が掲げる『一つの中国の原則』には抵触しないと東南アジアの加盟国に言い訳を与える必要があります。誰か『ルール上、台湾の加入は中国の主張に抵触しないのだ』と示さなければ東南アジアのTPP加盟国は台湾の加入に賛成できませんし、それを行うべきはTPPの盟主である日本をおいて他にいません。

台湾は世界的に影響力を増す中国に押され、苦境に陥りつつあります。数少ない外交関係にある国々も過去記事[”国会議員の仕事”]に書いたように中国に切り崩されつつあり、太平洋島嶼国のキリバスとソロモン諸島は2019年に台湾との断交を発表しました。更にパラオに対して中国は事実上観光ツアーを禁止するだけでなく違法漁船を放つなど、明確に圧力をかけています。


こうして中国政府が作り出した台湾の苦境に対し、友好国である日本がどのように対応するかが注目されます。まずは中国が『勘違い』しているルールを説明するという些細なことでも実行してほしいですね。