2019年平均給与は前年比▲5万円/給与総額は+8兆円 | 上下左右

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台湾の早期TPP加入を応援する会の代表。
他にも政治・経済について巷で見かける意見について、データとロジックに基づいて分析する・・・ことを中心に色々書き連ねています。

11月20日に2019年の民間給与統計調査の詳細が公表されましたので、内容を分析していきます。概要は9月に発表されていたのですが、ブログ休止中だったことと詳細データの確認のため、この時期になりました。

データを分析すると、大きく2つの特徴が見られます。
①平均給与の減少
2013年から続いていた平均給与の上昇が止まり、7年ぶりに減少に転じました。特に70歳以上男性の平均給与は、2018年の382万円から343万円へ▲39万円、ほぼ▲1割の大幅減少となりました。
また、全年齢層でのデータを見ると、100万円未満の給与所得者が+47万人、100万円以上200万円未満の給与所得者が+55万人と著しく増加しており、給与所得者全体の増加+229万人のうち200万円未満の給与所得者の増加が約45%を占めることになります。そのため2013年から低下し続けていた200万円未満の割合がやはり7年ぶりに上昇し、2016年に近い水準となりました。
なお前述の70歳以上男性の就業者数は+25万人であり、当該層の平均給与の低下からこの増加分のほとんどが200万円未満に該当すると思われますが、それでも200万円未満の増加分の1/4程度に過ぎませんので、70歳以上女性の+22万人などを含めた広い層で200万円未満の給与所得者が増えていると思われます。
なお言うまでもなく200万円未満の給与所得者ばかりが増えているわけではなく年収2000万円以上を除く全ての給与階層が増加していますので、個人の給与が低下した人はそれほど多くないでしょう。

②給与総額の増加
上述のとおり平均給与は7年ぶりに低下しましたが、給与総額は2013年から7年連続の増加で、特に2016年からは3年連続で約8兆円増加しています。
2017年の就業者数が+76万人、2018年の就業者数が+81万人だったのに対し、2019年の就業者は+229万人と急増したので平均が押し下げられた形ですね。
なおこの統計はあくまで『事業者側(=給与を支払う側)』を対象にした調査であり、近年増加していると思われるダブルワーク(副業者)はそれぞれ1名ずつで計上されますので、副業者の増加は平均給与の低下として表れます。
例えば45~49歳男性の就業者数は前年比+10万人以上増えていますが、副業のダブルカウント無しにこれだけ増加する余地があるとは思えません。

③日本の就業構造の変化
①②のとおり、2019年に日本企業は大幅に就業者を増やし、逆に一人当たりの給与を抑制する方向に舵を切ったと見られます。
特に200万円未満の層が一気に100万人以上増えており、正規雇用者が+164万人で非正規雇用者が+48万人であることを考えると、年収200万円未満の正規雇用者も相当程度増加しているはずです。しかし最低賃金は上昇しているため、待遇が悪いというよりも単にフルタイムではない正規雇用という雇用形態が増えているということでしょう。
時給1050円×8時間×20日×12ヶ月=201.6万円ですので、フルタイムで働けばそうそう200万円は下回らないものです。
また実感されているサラリーマンの方は多いと思いますが、超高齢社会を迎えて多くの企業は、定年の延長と合わせていわゆる賃金カーブの変更を実施しています。つまり長く働かせる代わりに賃金の上昇率を低下させ、総人件費を抑制するという措置です。
この変化は当然ながら統計上は一人当たりの給与=平均賃金を低下させることにつながりますので、当面は平均賃金の抑制が続くことになるかと思います。

働き方の多様化や高齢社会への対応により、平均賃金で景気の良し悪しを図るのは不適当だという時代が到来しているということでしょうね。