種苗法改正とグローバル企業による種子独占を結びつけるロジックは一体何? | 上下左右

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台湾の早期TPP加入を応援する会の代表。
他にも政治・経済について巷で見かける意見について、データとロジックに基づいて分析する・・・ことを中心に色々書き連ねています。

共産党系列からの反対が盛んな種苗法改正ですが、彼らの主張する『グローバル企業による種子の独占』が起こるロジックが分かりません。

◯グローバル企業の品種は優秀?
まず第一に、グローバル企業の種子が市場を独占するということは、グローバル企業が開発した品種はそれ以外が開発した品種や在来品種よりも優れていることが絶対条件です。低品質なものが市場を独占できるはずがありませんからね。

◯日本で栽培される作物の種苗状況
そうすると、何故今はグローバル企業の品種が市場を独占していないのかという疑問が湧いてきます。いかに自家採取が認められていようと自家採取した種子は市場には出回りませんから、現在でも『市場に出回っている種子』はグローバル企業が開発したものに独占されているはずなのです。ところが日本の種苗の供給体制は下記のようになっています。
・稲、麦、大豆、ばれいしょ等の主要農作物の種苗は、研究独法や都道府県の試験場が開発した優良な品種の原原種を元にして国内の種苗生産地で段階的に増殖したものが供給されている。
・野菜および花きの種苗は、国内の種苗会社が開発した優良な品種を用いて、国内及び海外の種苗生産地で採種されたものが供給されている。
・果樹の種苗は、研究独法や都道府県の試験場等が開発した優良な品種の母樹の枝(穂木)を他の品種に接いで国内で増殖し、苗木に仕立てたものが供給されている。
(平成30年6月 農林水産省食料産業局知的財産課より)

◯種子の開発と栽培環境
なお種子の9割は海外からの輸入となっていますが、これは単に『広大で災害の少ない土地』が種子の採取に向いている(日本の農地は種子の採取に向いていない)というだけの話で、種子開発には何ら関係ありません。逆に言えばグローバル企業も日本で種子開発する必要は無く、他国で開発した種子を日本で登録・販売だけしていればいいので、自家採取の制限で種子市場が拡大したからといって日本での開発・販売を積極的に参入する理由にはなりません。

そもそもグローバル企業にとっては農地に向かない日本での栽培に拘るよりも、広大で災害の少ない農地で栽培した作物を輸出した方が遥かに効率的でしょう。
「米など一部の作物について日本は輸入を制限している」という意見もあるかもしれませんが、農協の啓蒙活動もあり日本の米の種子更新率(≒種子購入率)は全国平均で88%にもなります(平成29年産)ので、登録品種の自家採取が禁止されたところでほとんど影響の無い作物の筆頭と言えます。

今回の法改正は『種子の海外流出を防ぐ』のが主目的であり、言うまでもなく日本の品種は高品質なのです。
何故高品質な日本の品種がグローバル企業の品種に負けることになるのか、種苗法に反対している方々はシンプルにそこに疑問を持ってほしいと思います。