何故RCEP違憲訴訟が行われないのか/食料自給率が14%になると試算していた元農水大臣 山田正彦 | 上下左右

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台湾の早期TPP加入を応援する会の代表。
他にも政治・経済について巷で見かける意見について、データとロジックに基づいて分析する・・・ことを中心に色々書き連ねています。

過去記事[何故RCEP亡国論が書かれなかったのか/国益よりも省益を優先する経済産業省官僚 中野剛志氏]に続く『何故TPP反対論者はRCEPに反対しないのか』シリーズ第2段です。恐らく第3段は無いと思います。

さて、表題の山田正彦元農水大臣と言えば実際の農家の主張を切り取り報道し、指摘されると開き直るという人ですが、TPP違憲訴訟の主要メンバーでもあります。
TPP違憲訴訟で問題視していた内容は↓パンフレットのとおりですが、言うまでもなくほぼ同じことがRCEPにも言えます。

特に食料自給率が14%になるという山田氏が農水大臣を務めていたときの農水省試算は米・小麦が中国産と競合した場合の試算ですので、TPPよりもむしろRCEPの試算に近いはずなのです。
そしてその試算では米は何と90%が外国産=中国産に置き換わるという恐ろしいシナリオになっています。(小麦は99%です)



(平成22年10月27日 農水省TPP試算)

米の競合相手:中国産短粒種SBS価格(玄米換算)
小麦の競合相手:中国産小麦粉FOB価格(諸掛(フレート、保険料、引取経費)加算)
とハッキリと書いてありますね。TPPの試算のはずなのに中国産との競合を前提にしているといういい加減さに当時は呆れ返ったものですが、RCEPであればまさにこの試算が適用されることになるでしょう。
これはご自身が農水大臣だったときの試算であり、ご本人のブログでも「私が農水大臣時代にTPPの影響を計算させた時日本の食料自給率が14%に落ち込むことに愕然とした」と書かれているので、試算の内容を覚えていないということはないはずです。
つまり山田氏は中国との自由貿易が開始された場合の影響を試算しておきながら、それを何故か中国が参加しないTPPに当てはめて批判しておきながら、本当に中国が参加するRCEPに対しては何ら批判してきませんでした。

このダブルスタンダードの理由ですが、今は修正されたものの、かつてのご自身のプロフィールに答えがあります。
いわゆるWeb魚拓ですが、2010年時のプロフィール将来は牛だけでなく、中国の青島から子牛を輸入して日本の食肉基地としての”大牧場”を志す。と書かれています。つまり中国との自由貿易は山田氏の悲願であり、批判の対象になどなるはずもなかったのです。

今も種苗法改正について反対活動をしていますが、上記試算(中国産との競合が起こった場合の食料自給率)を信じるのであれば、中国との自由貿易は種苗法改正などよりも遥かに大きな影響を与えるものになります。何しろ国産米の90%が中国産に置き換わるわけですからね。

二枚舌や切り取り報道を駆使して精力的に活動している山田氏ですが、騙されないように注意してほしいものですね。