何故RCEP亡国論が書かれなかったのか/国益よりも省益を優先する経済産業省官僚 中野剛志氏 | 上下左右

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台湾の早期TPP加入を応援する会の代表。
他にも政治・経済について巷で見かける意見について、データとロジックに基づいて分析する・・・ことを中心に色々書き連ねています。

ずっと反対してきた私が戸惑うほど最近RCEPに対する反対論が広がっていますが、最早署名が止められる段階ではありません。
8月に『11月に署名しましょう』と15ヵ国で決めたスケジュールを、精々署名の5日前から始まった反対運動で覆せるはずはないのです。

では何故これほど反対論が噴出する政策が直前になるまで騒がれなかったのでしょうか?

延々賛否が出続けたTPPと比べると、RCEPは反対の旗振りを行う人間がほとんどいませんでした。反米を党是とする共産党はもちろん、TPP亡国論を書いた中野剛志氏ら一派もRCEPについては沈黙を守り続けました。代表的な中国・韓国の狗である山田正彦元農水大臣など言うまでもありません。
アメリカが絡まない政策に共産党が騒がないのは理解できなくもないですが、輸入デフレ論を骨子とする『TPP亡国論』の著者は、中国との協定であるRCEPに対してTPP以上に反対しなければ整合性が取れません。
TPPは先進国(OECD加盟国+シンガポール)が占める割合は6/12(アメリカ含む)でしたが、RCEPでは5/16に過ぎず、しかも中国とインドが参加する協定です。どちらの協定の方が安い輸入品が押し寄せてくる恐れが高いかなど、考えるまでもないでしょう。
では何故中野剛志氏らは頑なにRCEPに反対しないのでしょうか?可能性としては2つあると思います。
1つは過去記事[RCEPやイギリスのTPP参加には意地でも触れない反グローバリスト]にも書いたように、彼らのスタンスは反米親中であり、それを貫いただけだという可能性。
そしてもう1つとして、国益ではなく省益を優先したという可能性です。TPPの担当省庁は内閣府(担当大臣は経済再生担当大臣)で、RCEPの担当省庁は経済産業省です。TPP亡国論の著者である中野剛志氏は経済産業省の官僚ですので、TPPを妨害してRCEPを推進することで経済産業省の権益を拡大しようと画策したのではないでしょうか。TPPとRCEPは参加国の重複も少なくないため、RCEPだけが発効すればそれらの国との貿易量が増えた際の『手柄』を全て経済産業省のものにすることができます。
そしてお仲間である三橋貴明氏や藤井聡氏もTPP反対の論陣を張りつつRCEPは見守る方針に同調したものと思われます。TPPに対してはデマを流してでも反対していた3名ですが、「中野剛志 RCEP」「三橋貴明 RCEP」「藤井聡 RCEP」で検索しても不自然なほど何も出てきません。
反グローバリズムを唱えながら結局は国益ではなく省益のことしか考えていないのであれば、許されざる蛮行と言わざるを得ません。彼らは『財務省官僚は国益よりも財務省のことしか考えていない』などと批判していますが、財務省が経済産業省に振り替わるだけでやっていることは全く同じなのです。

こうした省庁の縄張り意識を変えるのは並大抵のことではないのでしょうが、縦割り行政打破を掲げる菅総理に期待します。

<2020年11月16日20:20追記>
『何故TPP反対論者はRCEPに反対しないのか』シリーズ第2段です。是非合わせてご覧ください。