RCEP11月署名へ大きく進展/日本は慎重な対応を | 上下左右

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台湾の早期TPP加入を応援する会の代表。
他にも政治・経済について巷で見かける意見について、データとロジックに基づいて分析する・・・ことを中心に色々書き連ねています。

本ブログではRCEPについて情報公開や報道が少なすぎると何度も不満を吐露していましたが、8月27日に行われたRCEP閣僚会合は何故か各紙で取り上げられたようです。
今回の閣僚会合には日本からは梶山経済産業相が出席し、『閣僚は、2020年11月の第4回RCEP首脳会議において署名するための、RCEP協定交渉の完了に向けた大きな進展を歓迎した。』との共同声明を発表しています。
過去記事[反グローバリズム=反米主義?/中国との協定には反対しない自称反グローバリスト]に書いたとおり、RCEPはほとんど何の発表も報道もされないまま、昨年11月に交渉は終了しており今署名に進んでいないのはインドが離脱を表明したことが原因で手続きが止まっているで、内容は固まっているのです。産経新聞は「関税の撤廃・削減でまだ合意に至っていない分野で進展があったようだ。」等と呑気な記事を書いていますが、そんな段階はとっくの昔に終わっています。

閣僚級の会合で3ヶ月という具体的かつ短い期限を切って声明を発表したということは、インドの姿勢に変化がない限り11月に署名手続きに進むという意思表明なのでしょう。過去記事[脱中国は脱RCEPから。日本政府は政策の見直しを進めよ]で、先月25日のAPEC貿易担当大臣会合で若宮外務副大臣が『アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)実現への道筋として、TPP11の着実な実施及び拡大とRCEP協定の年内署名を目指すこと』を日本が重視する点の一つとして挙げたことに対し、日本がRCEPをインド抜きで進めるという誤ったメッセージとして伝わりかねないと批判しましたが、本当にインド抜きでも構わないという方針に転換したようです。

RCEPは数年前にはASEAN+6(日中韓、印、豪、ニュージーランド)とも呼ばれており、少なくとも数の上ではASEANが中心の協定です。そしてそのASEANは明らかに中国との関係性を深めておりこのような状況でインドも抜きに協定を進めてしまうと日本も中国の経済圏に巻き込まれてしまう恐れがあります。もちろん逆に、今中国とASEANの関係に楔を打っておかなければ取り返しがつかないことになる可能性もあり、極めて難しい舵取りを求められている状況ではあります。

日本国内への影響を考えると、現状のようなほとんど情報が未公開の協定を許すことはできません。
国際的な観点から見ても、やはり中国を牽制する意味でインド抜きの協定に賛成することはできません。アメリカのライトハイザーUSTR代表がTPPについて「TPPにはいずれ中国が入り、ルールを守るかに関わらず恩恵だけは受ける」と語っていましたが、TPPはともかくRCEPは元々中国主導の協定であり、牽制が十分に働かなければこの指摘のようになる可能性が非常に高いと思われます。どうしてもインドが参加しないのであれば、日本の脱退も検討するべきです。
日本の外交力を信用しないわけではありませんが、RCEPについては情報開示を進め、かつ慎重に進めてほしいと思います。