中国との関係を深化させる東南アジア諸国 親中国/脱中国の鍵は日本 | 上下左右

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台湾の早期TPP加入を応援する会の代表。
他にも政治・経済について巷で見かける意見について、データとロジックに基づいて分析する・・・ことを中心に色々書き連ねています。

最近気になるニュースが2つありました。
カンボジアと中国が、わずか半年の協議で自由貿易協定(FTA)を締結することが発表されました。カンボジアにとってはEUが8月12日に発動した経済制裁に対抗する政策の柱であり、カンボジアの親中色が一段と強まるのは必至と見られます。
タイでは8月12日に内閣改造が行われ、内閣改造の翌日にRCEP調印を閣議提案する準備が整ったと報道されています。タイについては今年の初めにも同様の報道があり方針転換をしたわけではないのですが、過去記事[TPPに前進するイギリスと後退するタイ]書いたように、タイはTPPに対しては加盟に積極的な姿勢を見せていたものが消極的になっています。
更に今回の内閣改造でTPPに積極的だった経済関係閣僚が交代し、TPP加盟への先行きが一段と不透明になっていた中でRCEPについては前向きな姿勢を維持しており、優先順位として明らかにRCEPが上になっていることが分かります。

同じ過去記事でも紹介していますが、中国税関総署が14日発表した2020年1~6月の貿易統計では、東南アジア諸国連合(ASEAN)との貿易額が国・地域別で初の首位となった報じられています1~6月はコロナショックがあったにも関わらず、ASEAN貿易額は前年同期比2%増の2978億ドル(約32兆円)とプラスを維持しており、前年比▲5%となった対EU貿易や▲10%となった対米貿易とは対照的な動きとなっております。
事実上ASEANと中国を中心にした貿易協定であるRCEPはインドの離脱により一旦停止していますが、このままASEANと中国の結びつきが強まればインド抜きでも締結となるでしょう。
対中包囲網としての働きが期待されるTPPも最近イギリスの新規加入へ向けた動きが活発になっておりますが、アメリカの離脱により11ヶ国となった参加国のうちマレーシア、ブルネイ、ペルー、チリの4ヶ国はまだ国内の批准手続きが終わっておらず、東南アジア内の批准国はベトナムとシンガポールの2ヶ国しかないのが現状です。
ここ最近急速にアメリカを中心に主要先進国による脱中国が進んでおり中国の一帯一路構想は停滞・反転し始めたと感じている方もいると思いますが、東南アジア諸国はむしろ中国との関係性を深める方向で動いており全体感では動きに陰りはないと見るべきでしょう。

経済面での対中包囲網の核となるTPPの事実上の盟主であり、RCEPの参加国でもある日本こそがアジアの親中国/脱中国の動きを決める鍵ではないかと思います。
オバマ前米大統領が言ったように世界経済のルールを中国に書かせるわけにはいきません。RCEPの進展を阻止すると共にTPPの拡大を図るなど、難しい舵取りではありますが日本政府の動きに期待します。