昨年度の税収2兆円減/景気後退やコロナショックの影響は限定的 | 上下左右

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台湾の早期TPP加入を応援する会の代表。
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2019年度の国の税収総額が18年度に比べて約2兆円少ない58.4兆円になったと報道されています。

過去記事[コロナショック/売上微減・利益激減・設備投資増加]で詳しく解説しましたが、2020年度は赤字決算になる企業が増えることが予想され、年度末に大企業による経費計上の前倒しが起きました。
中小企業は前後の年度で赤字が発生すれば全額を繰越欠損金として損金に計上できますが、大企業だと半額しか損金に計上できません。
つまり大企業は翌年赤字になることが予測されるのであれば黒字を確保できる年に先に経費を多く計上して赤字の年の損金を少なくした方が、法人税の支払い総額が少なくなるのです。

結果、資本金10億円以上の企業は2020年1-3月期において経費計上額(売上高ー営業利益)を143.7兆円から155.1兆円と、前年比+11.4兆円も増加させています。
2018年度から2019年度への税収減は2.1兆円ですが、仮にこれら大企業の法人税率が20%とすると、経費増による税収減は11.4兆×20%=2.28兆円なります。
つまり前年からの税収減はほぼ『2020年度の赤字を見据えた大企業の経費前倒し計上』による法人税の減少の範囲内であり、景気後退やコロナショックによる影響は限定的だったと言えるでしょう。

一方、現時点の税収見通しは63.5兆円と言われていますが、2020年度は赤字決算を見込んでいる大企業が増えているからこのような結果になったので、2020年度に税収が増えるということはまず考えられません。雇用情勢の悪化から所得税の減収も想定されますので、再び緊急事態宣言が発令されなくとも2020年度の税収は50兆円を切る程度には減少するでしょう。

大型の補正予算を組んだことと合わせ、今年の財政赤字は想像を絶する水準になりそうです。